学園サバイバル(1)
「ミーンミーンミーーン」
セミの鳴き声が未だに聞こえる。
夏休みが終わり一週間がたった。今は日本史の授業だ、幕末、新選組について先生が話している。
「いいか。沖田総司は幕末のみではなく日本の歴史の中で一番強い剣士だぞ。」
他の生徒が質問する。
「先生一番強いのは天下統一した豊臣秀吉、徳川家康じゃないんですか?」
「確かに、秀吉や家康は強かったが彼らは策士として戦争という部分でより優秀であった、だが幕末という動乱の中は大人数での大戦というよりは暗殺など対個人での死闘が多い故に剣術のキレや危機察知能力が勝敗を決める…」
ああ始まった。と皆が思った、いや。質問したやつはこうなることを予想していただろう。
日本史の河合先生はいわゆる歴史マニアだ。一度話しが脱線するとしばらくは戻らない。
つまり授業が止まるわけだ。ほら成績の低い生徒たちはニヤニヤしてる。
「きーんこーん、かーこーん」
チャイムがなった。
「おっ、もうこんな時間か。今日の授業はここまでとします。」
休み時間みんなケータイのアプリを開き始める。最近はやりの「BATTLE」というアプリだ。
「よっ!「BATTLE」しよーぜ未來。」
後ろから肩を叩かれた。後ろの席の扇堂翼だ。
「俺はやってないって言ってんじゃん翼。」
「なんでまだやってないんだよ!始業式の時あれだけ進めたろ!」
「いや、どうせ課金しないと強くならないやつだろ。金ねーし。」
「ばかっ。ちげーよ。このアプリは課金なしでも不利にならないんだ。」
「えっ。なんで?」
おれはびっくりする。普通アプリのゲームは課金してガチャを引きレアアイテム、モンスターをゲットして進める。おれもこの前まで違うアプリゲームをやっていてちょっと課金したがいいモンスターがでなくてやめたところだった。
「最初に起動して卵をもらい育ててふ化させるんだけど。所持できるモンスターはそのふ化させたモンスター1体のみで、しかもどういう訳かリセマラ(リセットマラソン....最初の段階でレアモンスターが出るまでアプリのデータを消して最初からやり直すこと)してもふ化するモンスターは最初にふ化したモンスターと全部一緒なんだ。」
「まじかよ。じゃあやってるやつら全員同じモンスタースタートってことか?」
「はぁ。ちげーよばか」
翼は笑いながら馬鹿にしてきた。
「ふ化したモンスターは無数にあるモンスターの中の一体しかも誰一人モンスターが被らないらしい。そしてそのモンスター全部が2段階進化するんだよ」
「じゃあ。最初にスライムとかふ化させたら最悪だな」
ちょっと茶化しながらおれが笑った。
「おれなんて源義経だったぜ。」
おれと翼の会話に加賀美賢人が入ってきた。
「まじかよ。侍か~。おれは鳳凰だぜ。」
どや顔で翼がいう。
「うるせーよ。基本能力はあんま変わんないだろ」
どうやら基本的なステータスは余り変わらず特殊能力いわゆるスキルが勝敗を左右するらしい。
「ちなみにおれはもう第二進化までしたぜ。」
賢人が自慢した。どうやらモンスターによって進化条件が違うらしくどうしたら進化するかもだれも分からないようだ。
「まじかよ!ちょっとBATTLEしよーぜ。」
どうやら育てたモンスター同士をバトルさせるから「BATTLE」というアプリ名らしい。
翼と賢人の画面を除く、するとモンスターたちに声を出しながら二人がモンスターに指示する、するとモンスターがその指示通り動く。クオリティーたけぇ~と思った。
「うあー。やっぱ最終進化までしてるとめっちゃ強いな。侍も馬鹿にできないぜ。」
「その侍って何?」
翼が負けた後に聞いた。
「あー。種族だよ。俺の鳳凰は幻獣、あと聞いたことあるのが、機械、動物、恐竜なんかもあるらしい。その中でも一番すごいのが神らしよ。」
「らしいって見たことないの?」
「「ねーよ。」」
俺の質問に二人が同時に答えた。どうやら相当なレアモンスターの様でふ化した段階で最終進化した他のモンスターと同等の力があるらしい。
「じゃあ。おれが神ゲットしたらジュースな。」
と笑いながらアプリをダウンロードした。