98.ゴブリン殲滅作戦(3)
冒険者を総動員してゴブリンの集落を攻め落とす。
そのため、ダンジョンには立入禁止の処置が施され、多くの冒険者がギルド前に集まっていた。
以前、冒険者ギルドの報告が領主へ届いていないのではないかという疑問は、伯爵にひとこと言ったら改善された。
どうも途中の役職者のところでせき止められていたらしい。
もちろんその役職者は更迭されたらしいが。
さてそんなわけで正常運転に戻った冒険者ギルドである。
今回もリーダーはあの信頼厚い冒険者……ではなくシガンが指揮を取ることになった。
それもそのはず、領主の娘婿であるシガンは、準貴族のような扱いで、しかもダンジョンの最前線を行くアドリアンロットで最強の冒険者だ。
他に誰がリーダーを務めるというのだ。
「よし。ゴブリンの数は以前の殲滅戦のときより多い。恐らく指揮個体がまとめているはずだ。ゴブリンからの奇襲に気をつけろ。斥候を擁するパーティが先導して進むぞ。出発だ!!」
山の行軍は順調だった。
ゴブリンの奇襲は斥候が発見し、殺していく。
集落が近づくと、ゴブリンが慌てふためいているのが遠目に分かった。
恐らく冒険者たちの接近に気づいた指揮個体が逃げたのだ。
「面倒なことになったな……よし、とにかく集落の襲撃は続行だ。ゴブリンどもを根絶やしにするぞ。行け、突撃ィィィ!!」
シガンは冒険者たちを突撃させると、こっそり棒倒しをして指揮個体のいる方角を探る。
やはり集落から逸れた方角にいることから、逃走した可能性が高いと見る。
シガンは指揮を信頼厚いいつものリーダーに委任して、グリフォンの呼笛を吹いた。
ピーーーー。
どこからともなく現れたグリフォンに驚いた冒険者もいたが、大多数は気づかずにゴブリンの掃討をおこなっている。
シガンはウェストポーチから鞍を取り出してグリフォンに取り付けると、騎乗した。
鞍は、ベルが実家に手紙を送ったら返事とともに届いたものだ。
王都で購入できる伝手が欲しかったのだが、どうやらベルの祖父が持っていた鞍を孫娘のために放出したらしい。
ベルは父親と兄三人以外に、祖父にも愛されていたようだ。
「さあ、臆病者の指揮個体を狩りに行くぞ!」
「ぐるぅ」
バサリとグリフォンが羽ばたくと、風をまとってとんでもないスピードでシガンの示した方向へ飛んでいった。
ゴブリンの指揮個体は、数名の精鋭を連れて山を移動中だった。
それをグリフォンで轢き殺して、
「《俺はゴブリンの魔石を回収した》」
魔石を回収してとんぼ返りで集落へ戻った。
指揮個体のいないゴブリンの集団は烏合の衆だ。
熟練の冒険者たちにかかれば、ものの30分で片がつく。
シガンがグリフォンで戻ると、戦闘はほとんど終了していた。
そこで初めてグリフォンに騎乗しているシガンを見た冒険者たちは驚愕に包まれた。
「よし、集落を焼いたら凱旋だ! ものども最後の仕事だ、火傷なんてするんじゃねえぞ!」
シガンたちは無事にゴブリンの集落を殲滅すると、冒険者ギルドに戻った。




