94.マーガレット(1)
「凄いです! ポーションの原料どころか魔力ポーションの原料まで! 希少なエクストラポーションやエクストラ魔力ポーションの原料になる薬草まであるじゃないですか! 本当に一日で集めたんですかっ!?」
冒険者ギルドの受付嬢の嬉しい悲鳴を聞けてシガンは満足した。
しかしポーションにも色々な種類があることを失念していた。
ポーション類の原料を見境なく集めてしまったようだ。
「そういえば薬草を集めている最中にマーガレットっていう薬師に会ったんだが、知っているか?」
「マーガレット様に? シガンさんはご存知ありませんか。アドリアンロット前騎士団長マーガレット様のことを」
「元騎士団長だったのか、どおりで腕が立ちそうな婆さんだと思った。引退したのは年齢のせいか?」
「いえ。単純に長く役職に居座り続けていたため、後進に譲ったのだとか。今でもお庭で毎日、剣を振っていらっしゃるそうですよ」
「バリバリの現役か。ならゴブリンも問題ないか」
そしてシガンの言霊の不思議を見破るだけの感知能力も持ち合わせているらしいことに納得した。
「あ、そうなんです。ゴブリンがまた出ているんですよ。集落を作っていないかか確かめないと……」
「その依頼は俺たちが明日、請け負うよ」
「本当ですか?! ありがとうございますシガンさん!!」
「なに。冒険者だからな。それより教えてもらいたいんだが……」
シガンは件のマーガレットの屋敷の場所を聞いて、そちらに向かった。
マーガレットの屋敷はこじんまりとしていたが、庭の手入れもしっかりしていて小綺麗にしている様子だった。
「おや、スカジャンのシガンじゃないか。こんなところでまた会うだなんてね」
「偶然じゃないぞ? 訪ねて来たんだ。一本、前騎士団長にご指導いただこうかと思ってね」
「ふん、殊勝な心がけだね。でも私は引退した身だよ。見ての通りの婆さ」
「そうか? 毎日庭で素振りしてんだろ?」
「はあ……どこで聞いてきたやら。まあいい、上がりな。木剣を持ってくるから待っていておくれ」
「「お邪魔します」」
シガンとガールは門を開けてもらい、庭に出た。
庭は整えられていたのだが、一部だけ芝が剥げている場所があり、そこが素振りの場所だとひと目で分かった。
「さ、木剣を取りな。……若いもんに稽古をつけるのは久しぶりだよ」
「こっちも楽しみにしている」
「ふん。お世辞なんて言うもんじゃないよ」
シガンとマーガレットは、合図もなしに打ち合いを始めた。




