92.薬草採集(1)
翌朝、まずシガンはガールに会いにいくことにした。
屋敷の部屋に行ってノックすると、すぐにガールが扉を開けた。
「うわ!? ……ってガール、ワンピースは着ろよ」
「はいマスター。しかし寝る間はボディスーツだけでないと、ワンピースが皺になるとベルに言われています」
「じゃあ人を出迎えるときにはワンピースを着てから扉を開けてくれ。誰が客だろうと、待たせていいから」
「はい。次からそうします。それでマスター、用件はマスターの身体のことですか?」
「そうだ。また口止めをしに来た」
「マスター……なぜ魔物を取り込まれるのですか。そうまでしなければならないほど、ガールは頼りないのですか?」
「違う。俺はただ、俺自身の手であらゆる敵を倒したいだけだ」
「マスター、何もひとりで戦う必要はないのではないですか? マスターは人間です。人間は群れて道具と頭を使って戦うのだとデータにはあります」
「それはそうだが、それじゃ納得できない個人もいるってことだ」
「分かりました。それがマスターの個性なのですね」
「そういうことだ。じゃあ朝食でまた」
「……はい」
シガンはガールの部屋から立ち去った。
その日はガールと冒険者ギルドへ行くことにした。
ダンジョンにかまけてまた依頼がたまっていると思ったからだ。
案の定、受付嬢はシガンに泣きついてきた。
「シガンさん~、助けてください~っ」
「そうなる前に伯爵に相談しろよ……」
「領主様には報告しています。でもそれは冒険者の仕事だと一蹴されるんです」
「うーん。伯爵がそんなこと言うか? どっか間で報告が止まっていそうだな。また今度、伯爵に会ったら言っておくよ」
「ありがとうございます、シガンさん!」
「それで依頼は? 優先度順にならべてくれ」
「はい。こちらになります」
「なになに……怪我人用のポーションの不足? 素材の薬草からしてないのか」
「そうなんですよ。神殿に行って魔術をかけてもらえばいい人が大多数ですが、その場で緊急に治さなければならないときの需要があるんです」
「なるほどな……分かった。これを受けよう」
「本当にありがとうございます、シガンさん!」
シガンはガールを伴って山へ出かけた。




