91.ヴァンパイア(2)
シャドウストーカーとヴァンパイアとシガン。
全てが合一し、新しいシガンとなって生まれ変わった。
シガンの身体はコウモリの群体となった。
いざというときは群体を解いてバラバラになることもできる。
またコウモリの超音波知覚も手に入れた。
目を閉じていても、耳でものを見ることができるようになったのだ。
――なるほど、これが石化の魔眼に対する答えってわけか。
シガンは内心で人間の血を摂取しないと弱るような不便な能力を得るかと思ったが、そのようなことはなかった。
むしろ影を通じて相手の生命力を奪うという能力を得た。
影の手と影の槍が大幅に強化された形だ。
――血ではなく影を通じて生命力を奪うのか。
また影で相手を覆うことによって、眷属化するという能力をも得た。
眷属になると、影を操る能力を得る代わりに、シガンの命令に絶対服従するようになる。
精神を影で侵食する新しいチカラだ。
そもそも闇属性の魔術は精神に影響を与えるものが多い。
シガンはシャドウストーカーとヴァンパイアというふたつの種族から、濃い闇属性の形質を得ていた。
シガンの背後で●が呆れたように言った。
「また随分と人間離れしたものよ」
「●か。だがこれでバジリスクに負けることはなくなったぞ」
「もうよい、お前の好きにせよ。●は変わらぬお前を見続けていたかった」
「…………」
「マヨイガで永遠に過ごせたら良かったのに。どうしてこうなったんだったか」
「お前が俺を閉じ込めたんだ。俺の自由意志を無視すれば、逃げ出そうとするに決まっている」
「●はそれでも、お前と……一緒にいたかったのだ」
「それは……分かっているが」
「詮無きことを言った。●はいつでもお前の近くにいるのにな」
●は呟くように言うと、消えた。
「ああ。でも●、お前の願いは叶ったよ。俺はもう寿命じゃ死なない」
吸血鬼に寿命はない。
シガンは永遠に●といるという、●の願いを叶えることになった。




