76.ハルピュイア(1)
アデルの付与が終わった。
オーガやトロール、ミノタウロスの魔石を使って防具と服に防護の付与を行ったのだ。
アデルの付与魔術の腕前はかなりのもので、丸一日で仕事を終えると、魔導書を読みに自室にこもってしまった。
「さて、久々に冒険者ギルドの仕事を受けようと思う。どうやら冒険者がダンジョンに流れて、仕事が溜まっているらしいんだ」
「わかりましたシガン様。防具も整えたし、新しい魔術も習得済みです」
「シガンさま、わたしも魔術を習得したんだよ!」
「私もね、シガン。あなたに追いつくために、みんな必死で魔術の練習をしたのよ」
「そりゃ嬉しいね」
冒険者ギルドに行くと、久々の受付嬢が待ってましたとばかりに依頼票をカウンターに並べていく。
「もう遅いですよシガンさん。もっと早く来てくれるもんだと思って、手元に依頼を溜め込んじゃいましたよ」
「いくらなんでも多すぎだろう……って、この討伐依頼は?」
「はい。山にまたもや魔物の集落があるのではないかという推測が立てられていて、今はその集落の捜索に冒険者を駆り出しているところですね」
「分かった。集落の方は俺たちで探す。また地図を書こう」
「そうしていただけるとありがたいです。山に魔物が溢れると、今度は街にまで降りてきかねないので……正直、ギリギリのタイミングでしたよ」
「遅れて済まなかったな。しかしそこまで危険な状況なら、伯爵に報告すればよかったんじゃないのか? 俺に頼んでも、お義父さんに報告することができるし」
「あ、そうでした。ご結婚、おめでとうございます。シガンさん、ベルさん」
「「どういたしまして」」
シガンは依頼票を取ると、早速山に向かうことにした。
今回、山に集落を作っているのはハルピュイアだそうだ。




