69.ダンジョン(9)
さてアイアンゴーレムの討伐部位は全身だ。
つまり良質な鉄としてアイアンゴーレムの身体は売却できる。
これはベルのマジックバッグになんとか全て入った。
後は魔石だ。
魔石はシガンのウェストポーチ型のマジックバッグに入っていた。
ミノタウロスよりもかなり大きく、傷もないため高値で売却できることだろうとベルが請け負ってくれた。
「よし、マッピングを完成させたら地上に戻ろう」
シガンたちはボス部屋の広さを図り、部屋の奥にある扉を調べる。
罠も鍵もなし。
ただしアイアンゴーレムが健在ならば扉は開かなかったかもしれない、とベルは言った。
扉を開くと、そこには宝箱と第六階層へ降りる階段があった。
宝箱をアティとターニアで調べるが、罠などはないようだ。
ボス戦勝利のご褒美らしい配置の仕方だ。
宝箱の中に入っていたのは、魔導書だった。
ベルとターニアは食い入るようにして魔導書の中身を確認している。
「シガン様! コレ凄い! 見たことのないスクリプトが一杯、書かれている!」
「シガン、これは公表すべきかよく考えた方がいいわよ。確実に魔術界に激震をもたらすものだわ」
「……お前らが習得して使わなくなったら考えよう」
かくして地上に戻ったシガンたちは、まず地図を清書して冒険者ギルドに届けた。
その際、ボス部屋の敵がアイアンゴーレムであることと、階層にはオーガが複数出現することも記入してある。
というか出現した魔物はすべて列記されていた。
「これは……非常に難易度の高いダンジョンですね」受付嬢が困惑したように言った
「そう思う。ミノタウロスに苦戦している冒険者じゃあ、第五階層は無理だろうな」
「分かりました。複製を始めます……需要はあまりないかもしれませんが」
「何を言っている。ミノタウロスを倒して第五階層に挑戦するパーティが皆無ってわけじゃないだろ?」
「そう……ですよね。そうであって欲しいです。ところでシガンさん、ダンジョンにばかり潜っていないで、たまには冒険者ギルドの依頼を受けませんか? 高難易度もですが、色々と溜まってきているんです……」
「ああ、そっちが疎かになっていたのか。分かった、偶には大空の下で戦うのもいいよな」
「本当にお願いしますね?!」
「分かった分かった」
シガンは今度、ちゃんと冒険者ギルドの依頼を受けようと思った。




