66.ダンジョン(7)
結局、ミノタウロスをガールとシガンで倒すと、第四階層を越えて第五階層に降りた。
石造りのダンジョンは相変わらずだが、出現する魔物は確実に強くなっていた。
トロールという無毛の巨漢はオークと違って頭がいいのか、魔術を扱う。
またこの階層にはオーガが出現した。
一流冒険者になるための登竜門だ。
ミストナイトという通常の物理攻撃が効かない霧状の騎士も強敵だ。
しかしシガンの刀もアティの弓も魔法の武器なので、この階層では最も与し易い。
罠もだんだんと凶悪なものが出てくるようになった。
麻痺の魔術が発動する罠や、解呪しなければ生命を食い尽くす魔法の毒、特に危険なのはパーティを分断するテレポーターだ。
魔法的な仕掛けが増えてくるにつれて、罠の解除はアティではなくターニアの〈ディスペル〉に頼るようになってきた。
シガンは強敵だらけの第五階層をいたく気に入った。
罠さえなければ戦いに集中できるので、そこだけが残念なところだ。
宝箱からは魔法の品が入手できた。
かけると賢くなる眼鏡や電撃を放つ腕輪、極めつけはウェストポーチ型のマジックバッグだろう。
通算みっつ目のマジックバッグなのでアドリアンロット伯爵に売却する必要はない。
喜んでシガンは自分のものにした。
しかしオーガが複数体出現しても、ガールが強すぎるためシガンに苦戦しているという感覚はない。
だが他の冒険者パーティではどうなるのだろうか、と考えるとまずこの階層に来た時点で詰むのではないかとシガンは考えた。
そもそもミノタウロスから逃げ廻っているようでは第四階層の攻略はおぼつかない。
そして第四階層がなんとかなっても、ミノタウロスを苦にしないパーティでなければオーガ複数体にやられるのである。
トロール複数体でも、それは変わらない。
むしろトロールの方が魔術がある分だけ厄介な面もある。
飛び道具は後衛に被害が出るから厄介なのだ。
マップを埋めていく途中で、両開きの荘厳な扉を見つけた。
ベル曰くボス部屋だそうだ。
ダンジョンには定期的にボスが登場する。
そのボスを倒さなければ次の階層に進めないようになっているらしい。
なおボスは階層に出現する魔物より当然、強い。
俺はすぐさま挑みたい気持ちを堪えて、まず他の部分のマッピングを済ませることにした。




