55.ダンジョン(5)
第三階層の地図が冒険者ギルドで販売されると、冒険者たちはどうしたら上手くミノタウロスを回避できるかの検討に入った。
第三階層は大きく口の形をした階層だが、横道が多数ある。
中にはミノタウロスが入るには厳しい細い通路もあるのだ。
それを駆使すれば、ミノタウロスをかわしつつ第三階層の探索ができるようになっていた。
命が惜しいから第三階層は諦めかけていた冒険者たちだったが、「これなら地図を間違わなければ行けるのでは?」と判断をすぐに翻した。
マジックバッグというご褒美と、ミノタウロスの危険と、完全な地図の存在が冒険者達を翻弄していく。
……なるほど、これが魔物であるダンジョンのやり口ってわけだ。
宝物を餌に人間を腹の中におびき寄せる建物型の魔物。
ガールの言っていたことがようやく分かりかけてきたシガンだった。
第四階層のマッピングが始まった。
最短で第三階層を抜けるまでに半日弱かかり、そこからの探索なのでどうしても進みきれない。
ジリジリと探索を続けていたが、遂にシガンがキレた。
「野営をしよう」
遂にダンジョン内で野営をする覚悟を決めたのだ。
薄々そうなるのではないかと思っていたベルたちは、大人しくシガンに従うことにした。
野営の準備を整えるにはダンジョンの向かいにあるカイトの店を利用した。
毛布や保存食などを買い込んでいき、マジックバッグに詰めていく。
冒険者に野営をさせるためにマジックバッグを宝箱に用意させたのではないかというくらい、ダンジョンの思惑にハマっていた。
「マスター、実は私は睡眠をとらずとも7日程度ならば活動可能です」
「マジか。すげえなガール」
「ですからみなさんがおやすみの際は、ガールが不寝番を努めようかと思うのですが、いかがでしょう?」
「分かった。頼む」
ダンジョンの1階層分の探索だ。
一泊で終わると考えていたから、ガールの提案はありがたかった。




