52.ミノタウロス(3)
「〈ストーン・ブラスト〉!!」
ベルの魔術が開幕の合図となった。
石礫が巨体を襲う。
同時にアティが放った矢がミノタウロスの右目を狙った。
「ガアアアアアアアッッッ!!!」
雑に振るわれた戦斧が魔法を叩き落とす。
矢はわずかに頬に傷をつくっただけだった。
ガールが行こうとするが、それを手で制してシガンは言った。
「あれは久々の強敵だ。俺にやらせてくれないか?」
「しかしマスター。あれは難敵かと思われますが」
「だからこそだ。ちょうといい具合だろう?」
「なるほど、死闘をお望みなのですね。了解しました。危険になるまでマスターの戦いを邪魔しません」
「よし良い子だ」
シガンが行った。
居合いの初撃。
音もなく血しぶきが舞う。
同時にガクリとミノタウロスの身体が傾いた。
シガンの初撃はミノタウロスの右膝を割っていた。
「ガアアアアアッ!!」
戦斧が振るわれる。
背後でガールが緊張しているのが伝わってくるが、シガンはそれを無視して戦斧の回避に専念する。
「《ミノタウロスの攻撃は誰にも当たらない》」
言霊をかけて安全を確保する。
自分のではない。
後ろに残してきた仲間たちのためだ。
「〈ウォーター・スピア〉!」
「シガンさまっ」
ベルが水の槍を放ち、アティが矢を射掛けた。
ミノタウロスは戦斧でそれらを打ち払い、――シガンを見失った。
「鬼さんこちら」
背後から聞こえた声に、ミノタウロスは戦慄した。
その感覚は正しい。
シガンの一閃が腰を割った。
「ガッッッ!!」
左腕の肘打ちが来るが、シガンはもう背後にはいない。
逆側をついて脇腹を斬り裂きながら正面に回る。
「へ。5年もかかった鬼にくらべればなんてことはないな。ちょっと過大評価だったみたいだ」
言いながらシガンはミノタウロスの首を狙う。
しかしミノタウロスも伊達に迷宮の守護者と呼ばれてはいない。
戦斧で首を守り、――戦斧ごと首を切断された。
チン、という音とともにシガンは納刀する。
ミノタウロスの首から血が吹き出た。




