46.ガール
人造人間の少女を棺から目覚めさせる。
マニュアルに従い、長いスリープモードを解除して、シガンは棺を開けた。
肌に密着する形のボディスーツを身に着けた少女が、その中に横たわっていた。
数秒の沈黙の後、少女は目を覚ました。
「――おはようございます。対魔物殲滅兵器、GIRL起動しました」
「おはよう、ガール。長い眠りだったろうけど、身体に異常はないか?」
「……セルフチェック完了。ガールに異常はありません」
「そうか。今はお前の時代より遥かに未来だが、文明は後退してしまった。とりあえず地上に出よう」
「ここは研究室ではないのですか?」
「ああ。ダンジョンに取り込まれたらしい。君を開発した人たちはみな餓死してダンジョンに食われてしまった」
「ダンジョンの破壊を提案します」
「駄目だ。ここは観光地だ。入場料を取って運営している」
「ダンジョンを飼育しているのですね。それならば破壊の提案を撤回します」
「ダンジョンを飼育……ダンジョンは生き物なのか?」
「はい。ダンジョンは建物型の魔物の最強種です」
「ふうん。とりあえずその辺りのことも聞きたい。地上に戻ろう。……ベル、地図はどうだ?」
「あの……シガン様は古代語を喋ることができるんですか?」
「え? ああそうか。ガールはあの資料にある言葉を喋っていて、俺もその言葉を知らずに使っていたのか。……なら《ガールは今の時代の言葉を理解し喋ることが出来る》ようにした方がいいな」
「……!? マスター、これは一体!?」
「気にするな、今の言語をインストールしただけだ」
シガンはテキトーにガールを誤魔化して、「で、地図は?」とベルに問うた。
「ああ……はい。この部分が埋まったので第二階層は完全に埋まりました」
「ありがとう。よし、ガール。今の時代を見て驚くなよ? お前のいた時代とは随分と勝手が違うだろうからな」
「はい、……あの、よろしければマスターのお名前を教えて下さい」
「俺の名はシガンだ」
「シガン様――登録完了しました、マスター。以後GIRLはマスターのスレイブとして活動します」
「奴隷? いやマスタースレーブって意味か。分かった、俺がお前のマスターだ」
シガンたちはガールを連れて地上へ戻る。
その途中で魔物と遭遇した際、ガールは素手で魔物をバラバラにしたのだった。
指の先端から細長い物が射出され、それで切り裂いているようだった。




