43.ダンジョン(2)
ダンジョン、現る。
冒険者ギルドに届けられたその報は、すぐさま伯爵に届けられた。
同時にシガンは改装業者を呼び、地下室から屋敷の庭の方へ入り口を作らせるようにした。
入場料を取るためである。
ゲートを設置し、ひとまずは誰も入れないようにしてシガンは一番乗りを決めた。
もちろんベルとアティとターニアを連れてだ。
ダンジョン内は屋敷の延長とでもいうべき石造りの人造洞窟で、罠もあれば魔物も出現する。
宝箱もあった。
ちゃちな鉄剣だったが、売ればそれなりの金になる。
第一階層を徹底的に探索して地図を作成し、得られた魔物の魔石や換金部位、宝箱から出たものを全て冒険者ギルドに持ち込み換金した。
総額で金貨に届かない程度の儲けしかなかったが、それでも十分に稼げることが分かり、シガンは第二階層以降が楽しみになった。
ただしすぐに領主館へ召喚状が来たので、探索はお預けとなったが。
「それで、ダンジョンには既に潜ったようだが」
「はい。隅から隅まで回っても金貨に届かない程度の収益でした。第一階層では」
「第二階層以降がある、と?」
「はい。どのくらい深いのかは不明ですが……。入場料を取って、冒険者に潜らせる商売を考えているのですが」
「それは領主の仕事だと分かっているのか?」
「え、マズいですか?」
「当たり前だろう。普通なら屋敷ごと接収だ」
「え、そんな。せっかく整備を始めたばかりなのに。どうか領主様、ダンジョンの運営を私に任せてください。もちろん管理や監査のために人を入れてもいいですし、税金もたんまり払いますから。なにとぞダンジョンを取り上げないでください」
「はあ……貴殿には巨大野菜も任せておるからな。アドリアンロットに名産が増えたのは確かに美味しい。良かろう、屋敷はそのままにするが、人はやるぞ。基本的に運営はこちら主導で行う。入場料の一部を迷惑金として支払う形にさせてもらおう」
「あーなるほど。逆にそうなりますか」
「逆ではない。これが本来の形なのだ。大体、ダンジョンから魔物が溢れてきたらどうする。領主の責任問題になるのだぞ」
「そ、そうですね。分かりました、ではそれで行きましょう」
「まったく……まあこれからもスカジャンのシガンとは良い関係を築いていきたいものだな」
「そうですね、是非」
それが何の言質になったのか、このときのシガンには知るよしもなかった。




