33.ターニア
戦勝会にターニアが来ていたので、酒を片手にシガンは話しかけてみることにした。
「よう。オークキング戦では世話になったな」
「……ああ、あのときの剣士さん。スカジャンのシガンってあなたのことだったのね」
「まあな……」
いつの間にかスカジャンのシガンで名が通っているようになっていることに気づいたが、シガンはひとまず頭の片隅に追いやった。
「なあ、パーティが壊滅したんだろ。これからどうするんだ? 行く宛がなければ俺たちのパーティに来ないか?」
「色んな所から誘われているわ。なんでかしらね」
「いい女だからだろ」
「…………そんな下心みえみえの誘い文句は初めてだわ」
「ウチは14歳と12歳だからなあ。20歳くらいか? 大人の女性の魅力がウチのパーティにはないんだよ」
「ふ……そうねえ。スカジャンのシガンになら……。いえ、ちょっと酔い過ぎたかしら」
「外の風に当たりに行こうぜ。ここじゃやかましすぎてゆっくりできないだろ」
「……そうね。そうしましょう」
その夜、ターニアと連れ込み宿に入ったシガンは、パーティに女魔術師を追加することになった。
「シガン様は女癖が悪いです! 知りませんでした!」ベルがハンカチを噛みながら目に涙を浮かべて言った。
「シガンさまに置いていかれた! 昨日のことは末代までたたる!」アティもハンカチを噛みながら、ギラギラした目で言った。
「す、すまん」
「…………」ターニアはそっぽを向いた。
シガンは「今日から新しくパーティにターニアが入る」と改めて宣言した。
ベルとアティからブーブー文句が出るが、そこは気にしたら負けだとシガンは耐える。
とはいえシガンが格好いいのはベルもアティもよく分かっているし、パーティが全滅して辛いときに惚れたベルは実のところターニアに同情していた。
女子会が開かれ、シガンの悪口大会になったが、結局シガンの格好いいところ大会に変わるまで時間はかからなかった。
女性陣たちはすぐに仲良くなり、ターニアも屋敷に住むことになった。
その間、シガンは庭の家庭菜園で新しい巨大野菜を作ることに熱中して敢えて女性陣たちのことを頭から追いやっていた。




