31.オーク殲滅作戦(2)
シガンたちは木々の間に立つ、7体のオークを見た。
明らかに普通のオークとは異なる気配に、シガンも鳥肌が立った。
中でも他の6体よりも上位にいると思しき1体は、――名をオークキングという統率種の中では最高峰の強敵だった。
「グルルルル、ガアガア」
オークキングが命じると、6体のオークリーダーたちが一斉にシガンたちに襲いかかってきた。
「《オークは全て死ぬ》」
突然、ガクリ、とオークリーダーたちが膝をつく。
――チ。言霊で即死とはいかないのか。
恐らくは並行宇宙の中で、彼らの死は希少なのだろう。
高い確率で生きているからこそ、死を表に引き出しきれなかった。
それでもダメージにはなったようで、それぞれのオークはそこかしこに傷を負っていた。
オークキングも例外ではない。
突然、シガンが何事か呟いたと思ったら手傷を負っていたのだ。
そのあまりの理不尽さにオークキングは恐怖した。
「グガガガガ、ガルガルガル!!!!」
オークキングはシガンを指差した。
すると一斉にオークリーダーたちがシガンに殺到する。
シガンは居合いで迎え撃つが、さすがに6体は多すぎる。
「《オークの攻撃は当たらない》」
オークたちの棍棒の一撃を回避しながら、シガンはオークリーダーたちを斬り伏せていく。
もちろんベルとアティも魔術と矢による援護を欠かさない。
「《ベルとアティの攻撃はオークを皆殺しにする》」
突然、ベルの〈ストーン・ハンマー〉がオークリーダーの眼窩に突き刺さった。
またアティの矢もオークリーダーのこめかみを貫き、殺した。
――よし、行ける!
シガンが3体目のオークリーダーを殺したところで、オークキングが雄叫びを上げながら突っ込んできた。
このままでは数の有利さえなくなると危機感を覚えたのだろう。
シガンは迷った。
オークリーダー3体をベルとアティに任せるには荷が重い。
言霊の支援があるとはいえ、接近されて棍棒で殴られたら死ぬのだ。
かと言って、オークキングを交えて戦えるほどシガンは強くはない。
そのとき、光の剣がオークキングの行く手を阻んだ。
女の魔術師だった。
シガンは冒険者がこっちに援軍を送ってきたのかと思ったが、女の顔を見て違うと悟った。
凄まじい形相だった。
復讐、それだけを考えて女は〈シャイン・セイバー〉を撃っているように見えた。
「《シャインセイバーという魔術はオークに効果てきめん》」
果たして言霊の援護は必要だっただろうか。
複数飛来する光の剣を、オークキングはさばき損ねた。
光の剣がグサグサと突き刺さる。
その隙きをついて、シガンたちはオークリーダーを倒した。




