30.オーク殲滅作戦(1)
孤児院に少しだけ寄付してから、冒険者ギルドに行く。
すると案の定というべきか、オークの集落の討伐依頼が発生していた。
ただし今回はゴブリンほどの雑魚ではないため、志願者のみの参加だ。
もちろんシガンは志願した。
……ダジャレじゃないぞ。
そういえば中学校ではシガンが志願する、という嫌がらせが流行ったなあとシガンは懐かしいことを思い出していた。
名前弄りはどこでもあるとはいえ、シガンの方はマシな部類だ。
閑話休題。
さてシガンたちはオークの討伐隊に編成された。
斥候がいて、しかもスカジャンのシガンがいる。
もちろんベルの援護も十分凄いのは、ゴブリン掃討のときに知れ渡っている。
最前線での戦いを期待されていた。
冒険者たちを束ねるリーダーは前回のゴブリンの集落を掃討したときのリーダーだった。
このアドリアンロットで一番信頼のある男、と言ったところか。
リーダーはオークの集落の地図をくばり、進軍を声高に指示した。
今回はたった3人のパーティにも関わらず地図を配られた。
シガンたちも順調に冒険者たちからの信頼を得ているようだった。
オークに知恵者はいないのか、奇襲はほぼなかった。
幾度かの遭遇戦があったものの、オーク1体や2体に手こずるような連中はここにはいない。
集落までほぼなにごともなかったと言っていいだろう。
さて集落の襲撃だが、前回は待ち伏せを受けたので今回は慎重に斥候を出してオークの警戒度合いを探ってみた。
結果はシロ、オークたちは待ち構えてなどおらず、弛緩しきっていることが分かった。
リーダーは安心してオークの掃討を命じた。
ここからはシガンたちの仕事である。
シガンは我先にと飛び出す冒険者と共にオークの集落へ入り込み、居合いでまず手近な1体を殺した。
「ベル、アティ、はぐれるなよ!?」
返事も聞かずにシガンはオークをバッサバッサと斬っていく。
時折、背後から石の弾丸や矢が飛んでくることで後衛ふたりの無事を確認しつつ、オークの家屋に入り込んだ。
そこには嬲られた女性の死体が幾つも転がっており、思わずシガンはこみ上げてくる胃酸を飲み下した。
「ひでえことをする……!」
「シガン様。オークは人に子供を孕ませることでより強い個体を産ませることができます。ここにこんなに女性の死体があるということは……」
「より強い個体とやらがこの数だけいるというのか?」
「はい、恐らく……」
その時、ドオン! という爆発音が響いて、次いで冒険者たちの悲鳴が轟いた。
「チ。まさか普通のオーク全てが餌だったってのか!?」
「シガンさま、強い気配がいくつか、集落に向かって来ているよ!?」アティが顔を青くして言った。
「チ。ふざけた真似をしやがる。オークってのは最低な種族だな。根絶やしにしてやるか。アティ、方角はどっちだ?」
「あっち!」
シガンたちは強い個体のいる方角へ走った。




