28.巨大野菜(2)
翌日、評判の巨大野菜は全て領主が買い上げた。
そしてシガンに領主館に来るようにとの命令が出された。
シガンは内心で随分と早かったな、と思った。
商売、第2フェーズの後半、開始である。
「こちらでお待ち下さい」
執事が応接間に通してくれた。
メイドの入れるお茶は紅茶だろうか。
レモンのような柑橘の輪切りと砂糖が添えられている。
久々の紅茶にシガンは大喜びで飲み干した。
やがて執事が領主を連れてきた。
領主はアドリアンロット伯爵である。
「巨大野菜は早速、領主館の料理人たちで料理をさせている。しばし待っていれば出てくることだろう。その前に話をしておこうか」
「はい」
「あの巨大野菜、スカジャンのシガンの屋敷でしか採れないというのは本当か?」
「いいえ、実はまだ種子が多くないので、実験もできない状況です。俺の読みではウチの敷地以外でも育つと思っていますよ」
「なるほど。それはすばらしい」
「領主様は、巨大野菜をアドリアンロットの名産品にしたいとお考えですか?」
「ふむ……」
「俺は名産品になると思って、目立つように売りました」
「まあそう急くな。料理ができたそうだ。朝食にしよう」
朝食はもちろん、シガンが持ち込んだ巨大野菜を使ったものだった。
スープをすすった伯爵は目を見開き、一気に飲み干した。
「すばらしい旨味だ……なんと甘い野菜たちだろう」
「急ぐ必要はありませんが、巨大野菜の独占販売をするなら急いだほうがいいですよ。商人たちもきっと遅かれ早かれ、大金を積んでくるでしょうから」
「確かに。これは少々、侮っていた」
「商談、成立ですかね?」
「この領地の名産品にしよう。種子はどの程度、用意できる?」
「急いで用意しますが……まずは畑よっつ分くらいですかね」
「分かった。そこから増やしていけばいいのだな?」
「はい。こちらも種子を取る目的で栽培を続けます。種を買い取ってください」
「もちろんだ。他のどこにも卸すことを禁ずる」
「おおせのままに」
シガンは商売の第2フェーズ後半を成功させた。




