27.巨大野菜(1)
家をもって人を雇うと、どうしても腰が重くなる。
高難易度の冒険で命を落としたら、彼女たちは露頭に迷うのだ。
シガンは必死に考えて、街を歩くことにした。
それはミカヤが屋敷に来る三日前から行っていた市場調査だった。
何がどのくらいの値段で売れているのか。
足りないものは何か?
余っているものは何か?
シガンは商売を考えていた。
シガンは露天を借りて、野菜を売ることにした。
巨大な野菜だ。
ニンジン、ピーマン、ジャガイモ、タマネギ、……etc。
どれも普通のものの何倍か大きく、大雑把な野菜だ。
通行人も目を奪われるが、値段はもちろん普通のものより高額で手がでない。
その中で野菜売りのおばさんが勇気を出してニンジンを一本買った。
このおばさんはニンジンを売っていたから、味が気になったのだ。
「これは……一体どういうニンジンなんだい?」
「幽霊屋敷で取れたニンジンさ。どういうことか、あそこの家庭菜園では巨大な野菜が取れるんだ。しかも味もいい」
「味も? ふうん……ガリ」
おばさんはニンジンをかじった。
するとニンジンのみずみずしい甘みが口の中に広がる。
「お、……おいしい!?」
おばさんの言葉で、我も我もと様子を伺っていた客たちが巨大野菜に群がってきた。
「はいはい、順番にどうぞ。売り切れ御免。あと大きすぎるって人は、ご近所におすそ分けするといいぞー」
こうして野菜は飛ぶように売れ、朝市での売上は銀貨10枚になった。
早朝の朝市で野菜を売り切ったシガンは、家庭菜園に戻って来た。
そこには巨大な野菜たちが育っていた。
シガンは井戸からくんだ水をやると、
「《ここの野菜は大きくて栄養満点、そのうえ美味しい》!!」
言霊を唱えた。
たったこれだけのことで早朝に銀貨10枚である。
これから冒険に出かければ、更に稼げるだろう。
ただしこれは言霊を使えるシガンがいなければ成り立たない商売だ。
だからシガンは、次のフェーズもちゃんと考えていた。
この野菜の種を植えて、自分がいなくても巨大野菜を栽培できるようにすることだった。
つまり言霊による品種改良である。
なんでもありの言霊だからこそできることだった。
背後に少女が現れてため息をついた。
「やれやれ。●の与えた言霊をつまらないことに使う……」
「仕方ないだろ。雇った屋敷の人間を守る義務が、俺にはあるんだ」
「仕方ないのう。ところでシガン、マヨイガに戻る気はないか?」
「こんな立派な屋敷を手に入れて、今更なんでマヨイガだよ」
「そうか……」
●は鼻を鳴らして消えた。
「なんだったんだ、一体?」




