26.メイドと料理人
シガン一行が幽霊屋敷の依頼を成功させたという噂は街中に広まった。
中心街にある広々とした屋敷だ。
買い手はたくさんついたが、そもそも売る気のないシガンだ。
不動産屋を追い払って、屋敷の掃除をすることにした。
「《屋敷は全盛期並に綺麗になる》!!」
言霊に頼ったが……。
「うわ、なにこれ!? シガンさま、屋敷がものすごくピカピカになったよ!?」アティが口をあんぐり開けて言った。
「なんですかこれは一体……」むしろベルは恐ろしい何かが起こったのではないかと恐怖している。
「きっとあの少女の贈り物さ」
シガンはテキトーなことを言ってふたりを納得させると、屋敷の部屋割を始めた。
というか広すぎる。
確実に屋敷を管理するメイドなりなんなりを雇わなければならないだろう。
シガンは孤児院で掃除、洗濯、料理などを得意とするモニカとニーナを雇った。
条件は住み込みで三食つきである。
特に給金は出ないが、孤児院と違って三食しっかり食べられるのがポイントが高いらしい。
給金がなければ退職できないだろう、とシガンは思ったが、退職金を出せばいいのだとベルとアティに言われた。
なるほど、彼女らに現金を渡してもすぐに使い果たしてしまい、貯蓄ができないのだろう。
納得したシガンは上記の条件でモニカとニーナを雇い、屋敷での生活が始まった。
家具はバラバラにしてしまったから、殺風景なリビングやダイニングで食事をとることになる。
孤児院ではロクな食事をとれなかったのだろうか、パンを焼いて魚を焼いただけの料理が出てきたときはシガンもびっくりした。
宿の食事のクオリティの高さを改めて知ったのだ。
掃除と洗濯をふたりに任せて、料理人を雇った方がいいとシガンたちは気づいた。
とはいえそんな伝手はない。
冒険者ギルドに行くくらいしか思いつかなかった。
「あ、それなら領主様にたのんでみたらいかがでしょう?」受付嬢はあっさり解決策を出した。
「領主様か……どんな方なんだ?」
「デキた方ですよ。スカジャンのシガンを買っていらっしゃるので、きっといい料理人を紹介してくれると思います。打診してみましょう」
「おお、助かる」
それから3日後、念願の料理人がやってきた。
ミカヤという老婆だ。
領主の館で料理人を務めて数十年、後進も育っているし暇を持て余していた人だった。
その日の夕食は彼女が腕によりをかけたもので、非常に美味だった。
モニカとニーナは「これが料理……!」と愕然としていたらしい。




