25.幽霊屋敷(3)
リビングを抜けると、キッチンでスケルトンと戦い、反対側へ進めばゴーストが現れる。
物理攻撃の効かないゴーストだが、シガンの刀はマヨイガの霊刀。
もちろん真っ二つにした。
そうして進んでいると、二階への階段が現れた。
シガンは喜んで登る。
ベルとアティは割とこの時点で疲れ果てていた。
なにせアドリアンロットの街中にこんな場所があるとは知らなかったし、見慣れないアンデッドにはどう戦っていいか分からない。
支援の仕方が分からないのだ。
だからここまでシガンひとりで戦っている。
シガンは激しくなっていくアンデッドの攻勢を刀一本で迎え討ちながら、どんどん進んでいく。
二階の奥の部屋。
そこがシガンの見極めた幽霊屋敷の核のある場所だ。
シガンは扉を開け放った。
カーテンの閉じた暗い部屋。
その中心に、女の子の幽霊がこちらを忌々しげに睨んでいた。
「どうして勝手に入って来るの。ここは私のお家なのに!」
「可愛そうな幽霊だ。まだ自分が死んだことに気づいていないのか?」
「ママとパパが帰ってくるまで、私がひとりでお留守番するの! 帰って!」
ひときわ強い念動力がシガンに襲いかかる。
「《その幽霊は自分の死を思い出す》」
しかしその前に言霊が世界を変えた。
「え、あ――」
幼い少女は、顔面を蒼白にして言った。
「私、とっくに死んでる。パパもママも、とっくに……?」
「そうだ。お前はもう死んでいるんだ、現世にしがみつくな。どんどん歪みが増すだけだ」
「うん……お空のきれいな場所で、パパとママが待っているんだよね?」
「そうだ。この屋敷は俺たちが今度は守る。だから行け!」
「うん!!」
幽霊の少女はカーテンを開け放つと、陽光にかき消えるようにしていなくなった。




