22.アティ(2)
冒険者ギルドの受付でオーガ討伐を報告し、魔石、角、武具、金塊を売却する旨を伝える。
金塊を見た受付嬢は驚いたが、鑑定するように金塊に刻まれている文字を読もうとしている。
「この金塊はうちの領主さまのものですね。支払いに使ったものでしょうけど……すみません、領主さまに確認した方が良さそうです」
「ああ。別にそれで構わない。他のはどうだ? 武器の状態も悪くないと思うが」
「ああ、はい。こちらは多分、オーガに負けた商人の護衛のものでしょうね。状態もいいですから、抵抗もほとんどできずに殺されたのでしょう……」
基本報酬銀貨120枚。
もろもろ売却したものが銀貨20枚。
壺に入っていた銀貨が40枚。
合計で銀貨180枚の儲けだ。
ひとり銀貨60枚である。
アティは冒険者ギルドを出ると、孤児院にさっそく寄付しに行くと言った。
「そんなことよりアティ、まずは自分の装備を整えろ。冒険者を続けるなら、最低でももっといい靴がほしいし、短剣も揃えたい。弓ももっといいものに変えれば戦力アップになるし、背嚢やウェストポーチも買った方が、後々のためになる」
「そうですね、シガンさま。でも孤児院の子は今日もきっと飢えているはずです……」
「その分くらいは俺が寄付してやる。お前はベルと一緒に買い物をしてこい」
「は、はい! ありがとうございますシガンさま!」
ベルとアティは買い物を楽しんだ。
楽しむだけではなく、ベルはアティに釘も差していた。
カフェでベルはアティに「私とシガン様は恋人同士だから、宿の部屋を遠慮して欲しい。シガン様は優しいからあなたを放り出したりしないけど、私はふたりきりになれなくて辛いの」と正直に言った。
するとアティは、驚くべきことを言った。
「シガンさま程の方なら、私もご寵愛のほんの一部を受け取ることができるでしょうか?」
「なによ。まさかあなた……」
「はい。冒険者になるのはシガンさまに憧れて。おかしいですか?」
「…………」
そういえば自分もシガンに助けられて、シガンを好きになったのだとベルは思い出した。
「…………いいわ。シガン様はあまり幼い子は好みじゃないみたいだけど……」
「本当ですか!? ちゃんと後押ししてくださいね、ベルさん!!」
「わかったアティ。あなたは今日からシガン様のハーレムの一員よ!」
シガン不在のところで、なにやらとんでもないことが決まった。




