21.オーガ
オーガは三人の人間を見つけると、威嚇するために吠えた。
「ウオオオオオオオオオオ!!!!」
「《うるさい黙れ》」
「オ――――っ!?」
シガンは居合いでオーガの腹部を斬りつける。
ベルは〈ストーン・ハンマー〉を頭部目掛けて撃ち、アティも弓を頭部狙いで射掛けた。
オーガの頭を狙う限り、身長差でシガンに誤射することはないからだ。
シガンの居合いとベルとアティの攻撃で傷を負ったオーガは、「ぐむむ」と声を出すことができずにもどかしそうに腕を振り回した。
怪力なのだろうが、そこはシガン。
鬼との戦いならばマヨイガで散々経験してきた。
しかもオーガよりも格上の鬼との戦いを、だ。
シガンは腕をかいくぐり、側面に回り込んで斬りつける。
オーガの頭部に魔法と矢が飛来するため、オーガは身を低くしてシガンの相手をせざるを得なかった。
しかしそれが罠。
低くかがんだオーガの首をシガンは一撃で落とした。
わざわざ低い位置に首を置いたのがオーガの敗因だった。
「案外、大したことのない鬼だったなあ」
「やりました! シガン様!」
「さすがシガンさまです! 凄いです!」
ベルとアティが感動している。
オーガは冒険者にとって倒せるか倒せないかで将来性が分かると言われている。
倒せなければ永遠に三流冒険者。
倒せれば一流への道が開ける、登竜門的な存在なのだ。
「ベル、オーガは魔石以外に換金部位はあるか?」
「えとえと、確か角が人気です」
「ふうん。《俺は角と魔石を回収した》」
オーガの角が根本から消滅して、心臓に穴が空く。
同時にウェストポーチに重みが発生した。
恐らく角と魔石だろう。
アティは解体の様子を見ていたにも関わらず、何か違和感を感じて目をこすっている。
この辺りの感覚の鋭さも斥候としての才能なのだろう、とシガンは判断した。
「よし、少し早いがアドリアンロットに戻るか」
「あ、シガン様。洞窟の奥にオーガの蓄えたお宝があるかもしれません。きっと冒険者や商人を殺して何か奪ったはずです」
「そういうものは俺たちの取り分になるのか?」
「はい。基本的には」
「よし、洞窟の奥だけ探してみよう」
洞窟の奥には鞘に納められた剣や、鎧などの武具、壺にたっぷりと入れられた銀貨などが発見できた。
さらにアティが地面の様子がおかしいと言うので掘ってみると、金塊を見つけ出した。
思わず三人は黙りこくってしまったが、ともかく金塊も回収してアドリアンロットに帰還することにした。




