20.斥候
シガンとベルとアティは連携の確認も兼ねて、山でゴブリン退治をしに来た。
なお依頼は受けていない。
ゴブリンの魔石を換金するだけなので、事後で受けても構わないからだ。
これは三つ目狼にも言える。
「アティ、魔物が見えたら教えてくれ」
「はーい」
アティに索敵を任せつつ、棒倒しでゴブリンを探す。
するとシガンとベルが見つけるよりも早く、アティはゴブリンを見つけ出した。
「ゴブリンがいるよ」
「ほほう、凄いなアティは。この調子で頼む」
「うん!」
棒倒しの時点のゴブリンの位置と、それから移動した後のゴブリンの位置は普通、違う。
ゴブリンはシガンたちが移動している間にも移動しているからだ。
だからこのようにアティが移動中のゴブリンを発見する意義は大きかった。
この日はゴブリンを15体狩って、ひとり銀貨5枚の稼ぎとなった。
どうやら集落から逃げおおせたゴブリンがまだ山にはいるらしい。
それとは別に、アティの索敵能力のおかげで狩りが捗ったのだ。
なおアティの弓の腕もなかなか凄かった。
ほぼ百発百中。
飛ぶ鳥を落として夕食の足しにしていたなどというエピソードもあるくらいだから、相当な腕前だ。
翌日、さっそくオーガ退治に向かうことにした。
なおアティは一緒のパーティなので同じ三人部屋に泊まることにした。
ベルがなにか言いたげだったが、12歳のアティをひとり部屋にして二人部屋を取る勇気はシガンにはない。
東に向けて進む。
海岸沿いの山裾を進むと、確かに洞窟があった。
ここを通行できるようにすれば、アドリアンロットは他の街との通商がやりやすくなるだろうなあ、とシガンは思った。
洞窟はジメジメとしており、しかし足場はそう悪くなかった。
踏み固められている足場は、きっとオーガが出入りしているせいだろう。
アティが「奥に何かいるよ」と警戒を発した。
「ベルとアティは俺の後ろで援護してくれ。相手はきっと強いが、俺たちならなんとかなる」
「「はい」」
なおも進むと、身の丈2メートルはある鬼に出くわした。
オーガとの戦いが始まる。




