18.指名依頼(2)
冒険者ギルドに帰還すると、冒険者ギルド職員一同で出迎えがあった。
シガンにとっては馴染みのない職員も多いが、こうして労われるのは悪くないと思った。
報酬は貢献度順で決まる。
大規模な斥候を擁するパーティを筆頭に、概ねパーティの人数順に貢献度が決められた。
例外はシガンとベルのパーティである。
言わずもがなゴブリンリーダー撃破の功績を認められ、更にはベルの屋根上に陣取っていた射手の掃討も評価として認められた。
これによりシガンとベルはたったふたりのパーティながら真ん中くらいの貢献度を得たのである。
またゴブリンリーダーの魔石と曲刀はシガンが討伐したことが明らかなので、例外的にシガンたちの取り分となった。
全て売却し、貢献度順の報酬を得たシガンたちの報酬は銀貨120枚、ふたりで割っても銀貨60枚である。
正直、ウハウハである。
戦後の祝勝会に最初だけ参加して、シガンとベルは宿に戻った。
翌日、冒険者ギルドへ行くと、閑散としていた。
恐らく宴の影響だろうと考えていると、シガンを受付嬢が呼んだ。
「スカジャンのシガンさんに指名依頼です」
「またか。今度はなんだ?」
「東にある洞窟に住み着いているオーガの討伐依頼です」
「オーガ……鬼か」
「そんな! 危険すぎます!」ベルが慌てて話に割って入った。
聞けばオーガは身の丈が2メートルほど、筋骨隆々としていてゴブリンとは比較にならないほど危険な相手らしい。
シガンが聞いた感触によれば、マヨイガの鬼よりはマシな相手、といったところか。
「興味はあるし、受けたいとも思う。だが俺たちは見ての通りふたりしかいない。もっと大人数のパーティに依頼した方が成功しやすいんじゃないのか?」シガンは疑問をぶつけた。
「人数ではないんです。洞窟の広さを考えても、アドリアンロットの冒険者の強さを考えても……。シガンさんは既にアドリアンロットの冒険者の中では上から数えた方が早いくらいの強さだとギルドは見積もっています」
「ふうん。人数じゃない、か。それでもたったふたりのパーティに依頼するのは危険が過ぎるってもんじゃないか?」
「ふう……分かりました。何がお望みですか? できることは報酬の増額くらいですよ?」
「ちなみに報酬はいくらだったんだ?」
「銀貨で100枚です」
「なるほど。じゃあ銀貨で150枚だな」
「そんなの無理ですってば! せめて銀貨110枚」
「うーん。銀貨140枚でもやる気が削がれるぞ」
「お願いですから銀貨120枚でなんとか。ちなみに、これ以上は私の権限で上乗せできません」
「そうかい。仕方ねえなあ。次は銀貨130枚だったんだが」
「120枚です。これ以上は本当に無理です」
「分かった、それでいい」
結局、ベルの危惧をよそに依頼を処理されてしまった。




