14.指名依頼
「報酬はジャイアントクラブ40匹、ただしポーターに現物1匹を渡すので39匹分ですね。銀貨7枚と銅貨80枚です」
「1体が銅貨20枚か……意外と安いんだな」
蟹の原価と考えればそんなものか、ともシガンは思った。
何よりゴブリンと違って探す手間がない分、難易度は低い。
ジャイアントクラブ自体も横移動しかできないから、硬い甲羅さえなんとかなれば、ただのカモだ。
「少し歯ごたえがなかったか……」
「でもシガン様、これでしばらく宿の食事にジャイアントクラブが出てくるんですよ?」
「なに、それは嬉しいな。なるほど、確かにいい依頼だった」
シガンとベルは依頼成功の処理が終わって帰ろうとしたところで、受付嬢が慌てて呼び止めた。
「待ってください。スカジャンのシガンさん宛てに指名依頼が入っています」
「俺に? 誰からどんな依頼だ」
「はい。そこは担当の者が別室にてご説明しますので、そちらでお願いしますね」
「ふむ?」
指名依頼とは文字通り、冒険者を指名して依頼するものだ。
それは聞いたシガンもなんとなくだが理解できる。
だが内容を別室で、というのは普通のことなのか判断に困った。
「どう思う、ベル」
「え、何がですか?」
「わざわざ別室で依頼をする理由はあると思うか?」
「ええと……指名依頼を受けたのは初めてなので分かりません。ごめんなさいシガン様」
「あー……まあいいか。話を聞けば分かることだ」
担当の男性職員に案内されて、会議室に通された。
「スカジャンのシガンさん宛てに指名依頼が来ています。内容はゴブリンの集落の捜索です」
「誰の依頼だ?」
「この街の領主様です。シガンさんがゴブリンを一日で10体狩った実績を認め、ゴブリンの集落探しに抜擢したということです」
どうやら一日に10体は狩りすぎだったらしい。
シガンは今更のことだから気にしないでいいが、言霊のことがバレていないかだけは気にかかった。
棒倒しで集落を探せてしまうのは、今の所ベルしか知らないはずなのだが……。
「ちなみに見つからなかった場合の報酬はどうなる?」
「はい、見つけた場合は報酬銀貨10枚、見つからなくても半分の報酬銀貨5枚を出すとのことです。期限は3日となっております」
「なるほど、分かった。明日から3日でいいんだな?」
「あ、はい。そうですね、明日からで構いません」
「よし、ベル、帰るぞ」
「あ、はい」
シガンとベルは宿に戻った。
なお宿ではツインの一部屋に移ることにした。




