11.ベルベット(2)
ゴブリンを十体狩った時点で、太陽が高い位置にきていた。
シガンとベルは昼食にすることにした。
露天で購入した弁当を広げると、魚のフライのサンドイッチが出てきた。
「うまそうだ」
「はい、おいしいんですよここのフライサンド」
ベルは午前中だけでゴブリン十体を倒してのけたシガンにすっかり心酔していた。
もうこれほどの差があるなら、自分を情けなく思う必要はない。
シガンが凄すぎるのだ、と思うことにした。
そして同時に、このシガンという男を決して手放さないと心に決めた。
「シガン様、お口の周りが汚れてらっしゃいますよ」
「シガン様、午後はどうしましょうか。ゴブリンを狩り続けますか? それとも宿に戻りましょうか?」
「シガン様、シガン様、」
「…………」
食事中に色々と話しかけてくるベルに若干のウザさを感じたシガンだが、女といえばそういえばこういう感じでやかましかったな、と思い直すシガンだった。
午後は十分に稼いだので宿に戻ることにした。
というか、日が暮れると灯りがないのだ。
シガンは人より夜目もきくし、この世界の満月はものすごく明るいため日が落ちても困らない。
とはいえ山の夜歩きはしたいとは思えないので、街に戻るのがいいだろうという判断だ。
冒険者ギルドに入り、ゴブリンの魔石をまた10個出すと、カウンターの受付嬢は驚いた風で依頼成功を処理した。
「すごいですねえ。これだけゴブリンに遭遇できるのは運がいいのか、それともこれは不運なのでしょうか。まあ狩れるのなら運が良かったと言うべき?」受付嬢は混乱している。
「とっとと処理してくれ。銀貨10枚だろ」
「え、はい。銀貨10枚になります」
受付嬢から銀貨を受け取ると、シガンは5枚をベルに押し付けた。
「え、シガン様。私は何もしていません。受け取れません」
「馬鹿。俺たちは相棒だろう。稼ぎは折半だ」
「シガン様……」
ベルのシガンを見る目に熱を帯びていることに、冒険者ギルドの男たちは気づいていたが、ここまでカッコイイ男なら仕方ねえと早々と諦めていた。
その夜、シガンの部屋に夜這いをかけたベルは、見事にシガンの相棒から女にランクアップを遂げたのであった。




