101.ダンジョン(12)
徘徊する偵察用のドローンをやり過ごしながら階段へ向かうと、シガンの視界に戦車が映った。
ガールも起動していない兵器を察知することはできない。
戦車はシガンたちを認識したのか、突然エンジンを吹かして起動した。
「無人兵器です。UMT1軽戦車、主砲は76.2mm戦車砲。副武装に機関銃です。排除を開始しますので、皆さんは建物の影に隠れていてください」
ガールは指先から単分子シートを伸ばし、戦車をバラバラにした。
「マズいです。通信が……敵性反応が一斉に……」
「どうしたガール!?」
「恐らく同型の無人兵器が数台起動しました。そして未知のエンジン音を多数検知。おそらく別の無人兵器です。ああっ、ヘリのローター音まで……!」
「もういい、撤退だ! 全員、走って上り階段まで突っ切るぞ! ガール、進路上の脅威の排除は任せた!」
「了解しました」
なんとか無事に第十階層への階段までたどり着いたシガンたちは、急いで駆け上がったのだった。
地上に戻ったシガンは、ガールの部屋でタマを撫でながら第十一階層の攻略について打ち合わせをしていた。
「やっぱり厳しいか」
「はい。現代の技術ですと、機銃掃射を受けただけで後衛が死にます」
「そうなんだよなあ。俺とガールは平気だから、最悪ふたりで臨むか?」
「それも危険です。道中の罠にはアティとターニアの強力が必要ですし、ベルの冒険に対する知識は必要不可欠だと判断します」
「そうだな。3人がいなければ第十一階層まで行くのが大変だ」
「マスターの言霊では状況を打開できないのですか?」
「言霊かぁ」
できないか、と問われればできるとしか言いようがない。
ただもうそれはダンジョン探索ではない。
万能の理力をもって強引に結果を引き寄せるだけになる。
例えばシガンが「《このフロアの無人兵器はすべて破壊される》」と唱えれば、第十一階層を安全に散歩することができるだろう。
しかしシガンはそのようなことを望まない。
当初こそ言霊に回避を頼って戦ったりもしたが、今はこの世界の魔力を使える。
鍛えれば鍛えるほど強くなる身体があるのに、言霊に頼っていては進歩がない。
よって、あくまで戦って勝利を収めることに意味があるとシガンは考えている。
言霊は何でも出来るからこそ、使い所は自分の興味のない部分にしか使わないと、線引きをすることにしていた。
採取や商売に使うのはよくても、ダンジョン探索や戦闘には使うべきではないのだ。
「よし、しばらく置いておこう。第十一階層は難易度が高すぎて尻尾巻いて逃げてきた、そう伯爵に伝えればいい。あとは時が解決してくれるのを祈るばかりだ」
「……そうですね。マスターが無茶をする必要はありません。ガールたち以外の冒険者たちは第六階層にすら手を付けていませんから、急ぐ理由はありません」
かくしてシガンたちは第十一階層の攻略を一旦、諦めることにした。




