100.ダンジョン(11)
祝・100話。
ブックマークと評価、していただけると作者が喜びます。
あとここまでの感想とかあれば聞きたいですね(チラ
第十一階層に降りてシガンは思わず「あ!」と声を上げた。
アスファルトの道路、コンクリートの建造物。
近代的な風景に思わず故郷の日本を思い出さずにはいられなかった。
「……この異様な場所は一体?」
ベルが戸惑うように言った。
ターニアはふらふらと進み出て「これはまさか古代文明の遺跡では?」と震える声で言う。
「古代文明……ガールの時代だったか」
言われてシガンは景色をよく見ると、現代日本とは大きく異る点がいくつも散見された。
まず信号機と電柱がない。
ひっくり返っている車両に見覚えがない。
アスファルトの道路を持ち上げている根っこをもつ街路樹は見覚えのないこの世界の木であり、雑草もこの世界の生命力旺盛なものだ。
何らかの天変地異に見舞われたかのように街並みは破壊されていた。
「はい。確かにガールが開発された時代の市街地はこのような形であるとデータにあります」
「なあガール。信号機がないのはどうしてだ? 車はどうやって進行可能かを判断するんだ?」
「信号機、が何を意味しているか分かりません。しかし車両はAIにより制御されているため、公道においては適切に運行が管理されています」
「なるほど。全ての車が自動運転なのか……」
ひっくり返っている車両をマジマジと観察するが、完全に壊れているうえに年月も経っている様子だった。
ターニアも「これは神殿の文献で見たことがあるわ。実物をみることができるだなんて……!」と感激していた。
「しかし……これはマッピングが大変だな」
「そうですね。建造物が多すぎます」ガールが同意する。
「それ以前に魔物の気配を感じないよー?」アティがキョロキョロと辺りを見渡して言った。
「魔物がいない? ……まさかダンジョンだろうここは。そういうことはあり得るのか、ベル?」
「いいえ、ダンジョンのフロアで魔物が現れないということはないかと思いますが……」
仕方ないので手近な建物から探索することになった。
この時点で、無数にあるビルのひとつひとつを探索しなければならないことに気づいたベルたちが顔をしかめる。
「シガン様。これ、地図はどうしましょうか……」
「とりあえず建物内は省略でいいんじゃないか? 外観と入り口だけメモする形で……」
「はい、工夫してみます」
ベルは難しい顔をしながら地図を描いていく。
そのとき、ガールが周囲を見渡し、警戒を発した。
「全員、気をつけてください。機械音がします」
「機械? まさか魔物じゃなくて兵器が襲ってくるってことなのか?」
「その可能性が高いです。マスター、私が中心となって迎撃するしかないかと思われます。機銃の掃射などを受けて耐えられる防具を身に着けているのは私だけです」
「……銃があるのかよ。分かった、兵器の始末はガールに任せる」
「どうやら無人機のようですね。偵察用のドローンです。武器は搭載されていませんが、見つかれば何を呼ばれるか分かりません。やりすごしましょう」
シガンたちは建物の中で息を潜めてドローンの通過を待った。
「……行きましたね。この建物から調べますか? それとも降りる階段を優先しますか?」
「階段を優先しよう。ガールの見立てでは、まともな戦闘になりそうもないんだろう?」
「はい。武装によりますが、時代を考えるに銃火器は想定して然るべきです」
「よし。隠れながら階段を目指そう」
シガンは棒倒しで階段のある方角を調べると、ガールを先頭にして警戒させながら進むように指示した。




