常
「おい、早く起きないと遅刻するぞ」
目を覚ますと、坊主頭の厳つい男が皿を両手にこちらを覗き込んでいた
「、、、嘘マジで?」
「時計を見ろ」
7時50分を指していた
「準備を10分、登校を20分で出来るのならば話は別だが」
そう言って男は部屋を出て食卓に向かった
ベッドを飛び降り、寝巻きのまま急いで男の後を追った
「皆おはよう!」
既に食卓に集まっている普通よりは多いであろう家族に挨拶する
「「おはよう」」
食べずに待っていてくれたようだ
男も既に席についている
自分も急いで席につく
「「いただきます」」
特に変わらないいつもの朝が始まった
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少女の姿はいつも人の目を引いた
比較的短く、揃っていない金の髪は輝き、
空を思わせる大きい瞳は切れ長に縁取られ、力強い
整った顔立ちは日本人には無い美しさと野性味があった
もうひとつ目を引く理由があった
出掛ける際にはいつも誰か黒服の男又は女が控えているからだ
学校の誰もが彼女を知っているが、級友ですら素性を把握していない
教師もまた同じく
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あ、今日は藍さんだ
彼女が登校してきた
例によって校門の前で二三黒服と言葉を交わし、校舎に向かってくる
2分12秒後、彼女は教室に入ってくる
何故かは分からないが、いつも決まってそうなのだ
きっと私以外は気付いていないと思うけれど
彼女はいつも黒服の人と一緒に登校し、下校する
毎日人は変わって、特に規則性はみつからない
彼女は入学式から目立っていたし、雰囲気もどこか他の人とは違った
その所為か余りクラスメートとの交流はないようだった
その点においては人の事は言えないが
隣の席にならなければ私も話しかけようとは思わなかっただろう
そして、教室に彼女が入ってくるまであと3、2、1、、
開け放たれた扉から彼女が元気に入ってくる
「皆おはよう!」
「「おはよう」」
クラスの女子、男子関係なく皆笑顔で挨拶を交わす
周囲と他愛もない会話をしつつ席を掻い潜り、こちらに近づいてくる
「おはよう茜」
今までよりも明るく見える笑顔で彼女は私を見る
「うん、おはよう怜」
この学校で彼女を呼び捨てにしているのは私だけだ
今この瞬間私の一日は始まった
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