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1日のPV数が1,000超え。原動力になります。

更新頻度が少し落ちます、ごめんなさい。頑張ってストック増やします。

えっぐえっぐしながら語ってくれた内容を要約するとだ。

ジルトレに恋しちゃって勢いで告った後、ありがとうございますって言われてよっしゃこれは成功か!?と思った次の瞬間『ですが私、メリー様以外の女性には興味ありませんので』と大変素敵な笑顔で言われブレイクハートしたらしい。


あのロリコン最低だな。や、分かってるよ。本当はロリコンなんかじゃなく告白してきた女性を体よく断るためにわざと私の名前を出したことくらい。

それにしたって事実であろうとなかろうとショックの大きさ半端ない言い方しやがって、肋骨3本ほど折れればいいのに。あら…大変失礼をいたしました。公爵令嬢たるもの、言い方には気を付けないといけませんわね。私の愛しい家来の顔面偏差値高め系男子ジルトレの肋骨が3本ほど自らの意思で神のみもとへ旅立たれる日が訪れるのを心待ちにしてしまいそうですわ、おほほほ。


「もちろん…私なんかに興味がないのは分かっていたんです。アリーサと仲がよさそうでしたから、断られるとしたらアリーサの名を出されると思ったのですが…その、思いもよらない方の名前が出てしまい。日中のお仕事はなんとか終わらせられたのですが、先ほどジルトレ様のお姿が目に入り…思わず泣きそうになって、ここまで走って来たんです」

「あの………なんか、ごめんね」

「滅相もございません!お嬢様が謝られることではございません。すみません、こちらこそ」


どおりで私の顔を見て号泣して、ジルの名前を出した途端にもう一回号泣したわけだよ。あの女ったらしの悪魔級フェイスめ。


「でも冷静に考えてみればすぐ分かったことなんです。ジルトレ様が屋敷に来てからまだ1か月ほどしか経ってないですし。それなのに告白されたって、分かるわけないですよねー。むしろ男性にすぐアピールするふしだらな女とすら思われてそう……あはは、笑える」


ちょ、闇落ちしかかってるよ。大丈夫かなこの子。


「そもそもは私が勘違いをしたことがいけないのです。私、準男爵家の三女なんですけど。頭のいい一番上の姉と美貌に優れた2番目の姉の後に生まれたんです。この通り頭もあまりよくなく、器量もあんまりで…。実家での役割は姉2人で十分事足りますし、私のすることは一切ないのでこちらのお屋敷にきたのですが、やっぱりいまいち仕事もできなくて。せめて愛想だけはよくしておこうと、どんな頼み事やお仕事も笑顔で引き受けてきたんですけど」

「立派なのね」

「いいえ、それしか取り柄がないんです。けど、仕事でメイド長に怒られて落ち込んでいるときにジルトレ様が、あなたの笑顔には皆が癒されているんですよ、皆のためにも早く素敵な笑顔を見せてくださいね、って…」

「まあ…」


殺し文句にもほどがある。


「今まで姉ばかりが可愛がられてきたので。こんな私でも、ちゃんと見てくれている人がいるんだ、って思うと…すごくうれしくなってしまったんです」

「それは、そうよ。お父様がコーヒーをこぼす度に小言も言わずにニコニコ拭いてくれるのはミラだけだもの。他の皆、6回目あたりで顔が引きつるのに」


ちなみにこの6回というのは1週間に、ではない。1日だ。


「そのくらいなんともありません。私にはできることの方が少ないですから。それでも、唯一頑張ってきたことを褒めてくれた人は初めてだったので。ちょっと浮かれてしまったんです」


眉を少し下げて自嘲気味な笑みをこぼす彼女は、見ていて痛々しかった。


「でもジルが悪いわ。断るにしても、あんまりな断り方だもの。機会があればみぞおちのあたりをヒールで思い切り踏んでおくから、元気出して?」

「みぞ…、ふふっ。お嬢様でも、そんなよからぬことを思ったりするんですね」

「あったりまえよ!ヒールなんて履きたくもないのに、ダンスを踊ったあとに無意味に2時間立たせられたりするのよ?意味わかんないでしょ?」

「令嬢教育も大変そうですね」

「そのうえ少しでも姿勢が崩れると手は出さないけど口での罵倒がひどいのよ。メリー様、目が死んでいます。メリー様、死にかけの鶏のようなおみ足になっています。メリー様、端的に言って醜いです」

「あはは!お嬢様、ジルトレ様の声真似上手~!!」

「あ、ほんと?こうすればもっとかな?メリー様、お顔がヒキガエルのようです」

「~~~~も、もうダメです。お腹がよじれそうです!」












そう、私たちは知らなかったのです。

気づかぬうちに内緒話をしていた声が少しずつ大きくなり、ついには大声で笑っているために背後から近寄る人物に気づけなかったことに―――――。


のちにユーメリー・セントポーリアはこう語ります。

「あの時に戻れるのなら、今すぐ逃げろと自分とミラに伝えたいわ。その後のことと言ったら……ああ!思い出すだけでもおぞましい!ああ!」

「お嬢様!無理はなされず!」


――そのショックはいかほどばかりか。お嬢様の体調を考慮し、取材班はここで打ち切ったためにその真相は分かずじまいだ。









「そうよね、できればジルのあの綺麗な顔をこう…泥でぐちゃぐちゃにして泣きっ面にしてみたいわ」

「それは名案ですね!いっそ泥なんて優しいものではなく…ジルトレ様のお顔にタールのようなものをべっちょりと…」

「あはははは!それ最高!採用!」



「ゆ・う・め・り・い・お・じょ・う・さ・ま・?」



「ハッ……」

「そ、その声………は…………」



この現実を直視したくなくて、すごく、ものすごくゆっくりと後ろを振り返る。そして、ものすっごくゆっくり見えてきた人物は今まさにこの瞬間一番会いたくない人物第一位の姿だった。



「ミラが仕事中にいなくなったと言われ、探してみれば…、一体こんなところで何を話していたのでしょうね?大変、それはそれは、た の し そ う な 声が聞こえてきましたが」


やばい。これダメなやつだ。だって満面の笑みを顔に張り付けたまま青筋がすごいもん。

ちらりと横にいるミラを見てみれば、今度は顔中の汗腺から汗が噴き出ていた。かくいう私も体中からどっぱどっぱと湧き出ているわけですが。なんならチビりそう。おトイレ行きたい。



「ついでに私の名前も聞こえてきたようですが……あちらでゆっくりと伺いますので。さ、こちらへどうぞ」

「いや、ちょ、遠慮す…」

「聞き入れると思っているのですか?ユーメリー(大馬鹿)お嬢様?」


あれーおっかしいなージルの声が副音声で聞こえるーー。

むんずと首根っこをつかまれ、半ば這うようにして連行された。この後待ち受ける恐ろしいことを想像しちょっと震える。けどこっそり目を配らせればミラもこっちを見ていて、お互いに見合わせて少し笑った。










のを目ざとくジルに見られた。


「何笑ってるんですか、随分と余裕かましてらっしゃいますね」

「いやあの」

遠慮はいらな(覚悟し)そうですね(とけよ)




次回更新は9日の19時です

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