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ぶっちゃけあんまり他の公爵家は出てこないんで読み飛ばしても大丈夫です

一旦この話で王国豆知識は終了。次回からもう少し面白くなる、はず

若干辻褄合ってない部分があったので加筆しました

「では、本日からお勉強を始めます」

「はい」



朝食を終え、またアリーサとの一戦を交えた後侍女教育のために離れていくアリーサを見送ってからジルが声を出した。



「こちらが貴族録になります」

「鈍器じゃない」


目の前に置かれたそれは六法全書もびっくりなほど分厚かった。もう鈍器じゃん。凶器じゃん。


「花の挿絵や花言葉なんかも書いてありますし王家から準男爵家まですべてが書かれていますからね。このくらいになって当然かと」

「これをすべて覚えなければいけないの…?」

「いえまさか。伯爵家までで結構ですよ」


ああよかった。


「王家から伯爵家までおよそ300はありますが」


全然よくねえわ。


「直系だけなら伯爵家までで57です。分家や親戚筋も含めれば大変な数になるだけですから。まずは直系から始めていきましょう」

「不安しか抱かないわ…。準男爵家も入っているってことはジルの家も載っているのね?」

「ええ、大分後ろの方ですし花の挿絵も花言葉もありませんが。ちゃんと載っていますよ」

「すごいわねえ…あれ?最初のページは王家かと思ったけど、太陽神なの?」

「本当は太陽神が王なのですよ」

「そうなの?」

「ええ。神話の世界ほど前の話ですけどね。王家も、王でありながら公爵家として名を連ねているのはそこに理由があるのです」

「あ、確かにそうよね。王家も入れて、7つの公爵家だものね」

「ですから、王というのは役職でしかなく最高位の爵位は神…というのが事実です」

「王家は2ページ丸ごと使って載っているのね」

「一緒に神話や歴代王の名前なんかも書いていますから」


へえ。名簿みたいなものを想像してたけど図鑑みたいな感じなのね。なんかちょっと面白いかも。

やっぱり別名も一緒に載ってるのね。


「セントポーリアの花が最初に咲いたのよね」

「神話ですか。これは学者の間でも解釈が分かれているんですよね。実はゼフィランサスよりセントポーリアの方が重要なために爵位が逆なのではないかとかなんとか」

「えっうちが王家ってこと?」

「そうなりますね。まあ、ただの一説でしかないのですが」

「ふうん…でも私は今の方がいいわ。伸び伸び遊べるし」

「そうですね。私も今のほうがいいです」


次ページをめくるとやはり公爵家が出てきた。


「1ページに公爵家が3つずつ…しかもまた王家も載っているんだけどどういうことなの。見開きにしても我が家は載ってないのね」

「ええ…、先ほどの王家の話はあくまで神話と歴史しか書いておらず、公爵家の花や詳しい内容はほかの公爵家と同様にこちらに載っているのです。セントポーリア家は次のページに侯爵家の名簿と一緒に載っています。若干の理不尽さを感じないこともありませんが、余白の都合上…なんというか」


何も知らない人間が見たら公爵家が6つでセントポーリア家は侯爵家に間違えられそうな図鑑になってんな。

まあそれはいいとして。


「クンシラン家は宰相の家系よね、宰相って具体的にどんなことをする人なの?」

「基本的には王の補佐ですが、同時に王家へのご意見番兼相談役、といったところですね。王には進言し辛いようなことをクンシラン公へ伝え、さまざまな事情や情報を加味した上で王へのアドバイスをします」

「情報通でもありそうね」

「まさに。王城内部の事なんかはクンシラン家がすべてを把握しています」

「花言葉は誠実…」

「この方の人望も厚いようですね。王城に住まう使用人たちの声にも耳を傾けてくれるようです。その意見が全うな正しいものであれば尽力してくださるとか。王、というよりは国のために誠実に業務を遂行するようです」


「イキシアは騎士の家系ね。公爵家でありながら騎士って珍しい、のよね?騎士の爵位って、本来準男爵より下じゃなかったかしら」

「よくご存じですね。その通りです。騎士でありながら同時に公爵でもある唯一の家系です。騎士としての身体能力も統率力も、ずば抜けています。誇り高いという花言葉もそのまま仕事に表れています」


「次はアルストロメリア。未来への憧れ…って意味があるのね」

「その家系は代々頭がよく学者であったり医者であったりと、文明の発展には欠かせない人物ですね。水脈を見つける方法を発見したのもこの家ですし王城の設計なんかはアルストロメリア家が携わっています」


「プルメリアは恵まれた人…。何に恵まれているの?」

「豊かな土壌から生まれる領地の特産物でしょうか。茶葉なんかが特に際立っていまして、メリー様が飲まれている紅茶の茶葉もそこから仕入れています。商人としての腕も立つため、外国との貿易業で素晴らしい成果を出しており、金銭面で我が国を支えています」


「アゲラタムは安楽ね。断罪人、なのよね」

「そうですが、本来の役割は処刑人でした。祖父母世代の神話や貴族録には処刑人という別名で載っています。代々裁判官をしている家系なので断罪人という言葉の方が適しているために変更されました。

花言葉の安楽は、罪を犯した罪人の心を断罪することで安堵させる、という意味合いのようです。質実剛健な家系でして、精神の修行を重要視しているようです。おそらくは断罪する上での覚悟を意識してのことかと思われます」


「そして…我が家ね」

「ええ。セントポーリア家です。特筆すべきはやはり庶民からの人望でしょう。そして人材の家でもあります。屋敷には多くの使用人や見習いがいますが、セントポーリア家の使用人は優秀なことで有名です。爵位は低くとも有能な人間は多い方がいいですから。この家から巣立った者たちはみな、他の領地へ引き抜かれたりより上の爵位持ちの家で執事をしていたりと活躍しているのですよ。

本来ならばずっとこの屋敷に居てくれれば領地を管理しやすく利益ももっと出るのですが…旦那様は育った人間は他の地に行っても優遇されるからと、早々に手放しまた一から人間を育てるために多くの者を屋敷に呼ぶのです。

爵位を持っている家の者でも、長男以外は家を継げませんから将来に困って道を外れたり路頭に迷わないようにと自らの力でお金を稼ぐ術をこの家で教えてもらえます。自分の利益を鑑みず、多くの人間を救おうと尽力してくれます。これほど誉れ高い行為を私は他に知りません」

「…そうね。私、この家に生まれて幸せだわ」

「それは何よりです」




こうして、ジルからの解説も聞きながら貴族録の暗記が始まった。




気づけば昼の時間にまでなっていたようで、息を切らせて入ってきたアリーサが来るまで時間を忘れて読んでいた。

当たり前だけど公爵家以外にも色んな家があって、その背景なんかも知るとこの世界が現実であることをまざまざと突きつけられるような気がした。

ゲームでは攻略対象以外の人間はみんなモブでほぼ会話もないし。元々勉強なんてあんまり好きではないんだけど生き抜くためには頑張りますか。



「ああ、やっとアリーサさんがいなくなりましたね。あまり休めなかったのでもう少し休憩しましょうか」

「あら?アリーサを名前で呼ぶようになったの?」

「ええまあ。使用人の部屋も割と近いのでね…あの人なんて私の方が年下だからと、ジルって呼んできますよ」

「仲良くなったのね」

「いえ全く」


これはもしかするともしかする展開なのか!?使用人同士の恋、ってやつ?犬猿の仲だと思ってたあいつ、いつの間にか気になっていって……みたいな王道少女漫画的展開きますか!?


「さっさと旦那でも見つけて去ってくれたらいいんですけどねえ」

「えっひどい」

「あの人も同じことを言うのでお互い様です。メリー様との時間が割かれるので邪魔なんですよね」


ああこれ違った違うやつだ。単純に私を独り占めしたいだけだわ。


「…二人とも大好きなんだからあんまり喧嘩しないでね」

「うれしいお言葉をありがとうございます。願わくば、ジルのことが大好きなんだから、と言っていただけると嬉しいですね」

「さらっとアリーサを無いものにしようとしないで」

「願わくばですよ、願わくば」


減らず口もたいがいにせい。紅茶に手を伸ばせば、二人の喧嘩を見るうちにすっかり冷めきってしまっていた。でも午後ティーなんかはめちゃくちゃ冷たいしこのままでも十分美味しい。

ごくごくと水のように飲み干すと「メリー様…他の方の前ではやってはいけませんよ」とジルから小言を言われた。

ちびりちびりと飲んでいくのが女性らしくて良い行いらしいけどさ、息が詰まっちゃうよね。真夏の暑い日の中、喉がカラッカラな貴族の令嬢に冷たい水渡してもちびちび飲むんだろうか。本当にそうだとしたら尊敬するけど真似はできそうにもない。


次回更新は4日の14時です

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