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茅野くんに伝えたい。  作者: テイる
3/3

3ページ目 嫌いですが・・・

噴水にダイブしてしまってから翌日、夜々は何事もないように投稿した。

太陽は、いつにも増して、夜々の事を気にしていた。

そして夜々ともう一度、話をすることにした。


 休日の昼間の公園で、噴水に飛び込んでからどれくらい経っただろう。

太陽は、ケバブ屋のおじさんから借りた椅子に座りながら上半身を脱いで、服を乾かしていた。

おじさん曰く、夜々は凄く綺麗な女性だったと言うことを、太陽自身は未だに理解できていなかった。


(ん~確かに可愛いとは思うけど、綺麗ってどういう事だろう???花野井さんなら分かるけど、普段の春野さんを見ていて綺麗ってのは考えなかったな~)

「はぁ~…帰ろうかな~…」


 結局、その場では結論が出ずに、太陽はおじさんに挨拶をして帰宅した。

その頃、桜華の家では二人は一緒にベッドに座って話ていた。


「ねぇ、夜々!!せっかくだから今日は家でご飯食べていきなよ~♪」

「え、大丈夫だよ~、お風呂も借りて服まで乾かしてもらってるし~」


 夜々の断りも虚しく、巧みな言葉で桜華は夕飯に誘い、それを断れないと悟った夜々は渋々ながら承諾した。

 桜華は、満面の笑みになり、家族に電話を掛け始めた。夜々はそんな桜華を見ながら布団に倒れ込み、目を瞑って軽く休んでいた。

 その夜は、夜々も桜華も落ち着きを取り戻し、楽しい夕食を過ごせた。そして桜華の父親の車で夜々は帰路についた。




 翌日、学校に登校した夜々は、校門の少し前で桜華と合流すると桜華の教室前まで一緒に行動を共にした。

 桜華は昨日の事を心配していたが、夜々は笑顔で大丈夫と伝え、そのまま自分の教室に向かった。

そして、夜々は教室に入ると、いつも通りに無言で歩き出し彼女の席に着いた。そしてカバンから教科書や参考書を取り出し勉強を始めた。

 教室内では、複数の生徒で会話をしている声が聞こえたが、そんな音など気にもせず、夜々は黙々とノートの書き込みをしていた。

 そして、少し時間が経ち朝のホームルームが始まる少し前に、太陽が仲間と一緒に教室に入ってきた。


「だから、ごめんって。昨日はいろいろあって急用ができたんだって~」

「え~、太陽がいなくなったから私達、暇だったんだよ~♪今度はちゃんと付き合ってよね~」

「りょう~かい~♪あ、春野さんおはよう♪」


 夜々が登校していることに気づいた太陽は、笑顔で挨拶をした。夜々は少しビクッと震えたが、再び勉強を続けた。

 太陽は、気づかれない程度のため息をしながら夜々の席の前を通り過ぎようとした。


「…おはよう」ボソッ


 それは周りに聞こえるか、聞こえないか程度の小さな声だった。そして、夜々のその声は太陽にだけ聞こえた。太陽は驚きながら、夜々の方を振り向いた。夜々は少し顔を上げて太陽を見ていた。

 太陽はそれを見ると、少し間を置いて笑顔になり、夜々にピースをしてから自分の席に向かった。


(…なんで私、あの人に挨拶なんかしたんだろ…私はあの人が嫌い…そう、嫌いなのに…)


 そんな事を考えながら、再び勉強を始めた夜々であった。そして、それを4列ほど右斜め後ろの席から太陽は嬉しそうに見ていた。


「なぁ、太陽…お前さぁ、さっきから春野さん見てるけど、もしかして好きなのか?」

「はぁ!?なんだそれ?俺、そんなに見てたか?」

「めちゃめちゃ見てたわ。…なぁ、太陽…春野さんはやめとけ…俺、小学校同じだったけど、6年間ずっと花野井さん以外の友達いなかったんよ…」

「ああ、それ聞いたな~。まぁ、そんなことよりさ昨日のテレビ見たか?」


 太陽は、友人から夜々の事を聞かれていたが、それを遮り別の話題をしていた。

実際は昨日のオジサンの話もあり、夜々の事が気になりだしていてた太陽であったが、やっと挨拶ができた程度のため、それ以上の事を聞いたりは出来なかった。

 そして、その日の授業も終わり皆が下校する中、夜々も支度をして帰ろうとした。

それに気づいた、太陽は自分も帰り支度をそそくさと済ませ、夜々の後を追った。

夜々が、靴箱の前で履き替えているの見つけた太陽は、彼女に近づき声を掛けた。


「やっほ~♪春野さん、良かった少し話してもいい?」

「茅野くん…なんですか?私は特に話すことはないですが…」

「いや、あの…昨日はごめん…噴水の事…」


 そう言うと、太陽は顔を少し赤くしながら頭を下げた。夜々も服が濡れたときの事を思い出し、少し引きつった顔をしながらも頬を赤くし赤面していた。


「まっ…まぁ、あの時はお互いバランスを崩したのもあるし、ケバブを奢ってくれたから無しで大丈夫です。」

「ほ、ほんとに!?」

「えぇ…でも今回だけです。だから、これからはあまり話しかけないでください。」

「それはやだ!」

「!?」


 夜々の言葉に被せるように、太陽は強い言葉で拒否をした。

それにビックリした夜々は、唖然とした顔をしていた。

太陽はそのまま夜々に対して話を続けた。


「俺は、クラス皆で楽しくしたいんだ!それは誰一人抜けてほしくない。だから春野さんも一緒に楽しいと思ってもらえるクラスにする!そのために、これからも毎日、声を掛けるから♪」


 その言葉を聞いて、夜々は少し顔を下げて無言になりながら一度昇降口の外を見た。


「茅野くん…私は、貴方の皆を巻き込むところ、凄く嫌いです。静かに勉強をしていたいと思うし、ノリについて行けない人の事も考えて欲しいし、リア充発言も多すぎます。」

「…ご、ごめん…そんなこと思ってたなんて…」


 今まで、本人に言えなかった事を夜々はこの際と思い一つずつ話していった。

それを聞いて、太陽は自分の行いに対して、深く反省をしていた。


「でも、ここまで私に声を掛けてきた人、桜華とあなたくらいです…」

「春野…さん?」

「茅野くん…貴方を嫌いということは変わらないです。でも…」


 夜々は外を向いていた顔を振り返り、太陽に目を向けた。


「朝と帰りの挨拶くらいはしてもいいですよ♪」


 下校時間、昇降口の外から入る夕焼けは夜々の背中に当たり、夜々は付けていたメガネを外して満面の笑顔で太陽にそう答えた。

 太陽は、その夜々を見て息が止まるかと思った。その笑顔は、太陽の心を大きく揺らすくらいの優しく、美しく、そして儚い笑顔であった。




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