2ページ目 そこが嫌いなの・・・
夜々の事が気になって、一緒にケバブを食べる事にした太陽であったが、夜々はその行動自体が不思議あり、嫌悪の対象である太陽が側にいることでテンションが下がっていた。
そんな中、テンションが高かったのはケバブ屋のおじさんであった。
「来ちゃった…って…クラスメイトと一緒にいなくていいの?」
「あいつらとはまた遊べるし、それに今日は春野さんと話したいしね♪」
太陽はそう言うと、出来上がったケバブを2つとも受け取り、噴水の側のベンチに座った。
それを追うように、夜々もベンチに向かうと、太陽が持っていたケバブを一つ彼女に渡した。
夜々は、それを受け取ると同じベンチの端っこに座りながらケバブを口に入れた。
「お!?…美味しい!!このケバブ、甘いのにピリ辛なソースで食べやすい♪」
「プッ…」
「…なによ?」
「あの…普段、あんまり笑わない春野さんが…ケバブで…フフッ」
それを聞いた夜々は、頬を赤く染めながら太陽から顔を隠し、照れながらも再びケバブを食べた。
太陽はそれを見ながら、再び、夜々に聞こえやすいようにゆっくりと話した。
「春野さんってさ、学校で勉強ばかりしてるじゃん?友達作ったりしないの?」
「…一人、親友がいるし、クラス違うけど、それで充分。」
「学校ってさ、勉強も大事だけど、友達作ったり、皆で遊んだりってできるところだと思うんだ。一緒に遊んだりしない?」
「私、勉強が趣味だから…あと私、人と話すの苦手だし…」
「なら、俺と友達にならない?…話すが苦手なら挨拶からでもして欲しいな」
「…そう言うところが…嫌いなの…」ボソッ
「ん?今、何か言った???」
「特に何も言ってないよ…じゃあ、私そろそろ帰りますね」
夜々は、持っていたケバブを口にむりやり頬張り食べ終わると、包み紙を丸めた。
そしてベンチから立つと、そのまま帰ろうとした。
「ちょ、待って!!あっ!?」
「えっ!?」
太陽は、帰ろうとしている夜々の手を取り行くのを止めようとした。
だがその拍子に、バランスを崩した二人はそのままベンチを乗り越え、後ろの噴水に落ちてしまった。
「っつう~~~なんなの~~!?」
「ご、ごめん、大丈夫だった?春野さん…」
「濡れちゃったけど大・・・丈夫…!?」
「…っ!?///」
噴水の中から立ち上がろうとした時、夜々の服が濡れて透け、下着が見えてしまっていた。
夜々はとっさに腕で胸周りを隠した。それを見た太陽は、赤く染めて夜々から目を逸した。
少し無言の間が発生したが、その後・・・太陽から口を開いた。
「あの・・・さ…、良かったら…」
「夜々!!何やってるのこんなところで!?」
太陽が言い切る前に、少し離れた場所から大きな声がした。
そこには、桜華が息を切らしながら立っていた。
桜華は、息を整えながら噴水の近くまで歩いてくると、太陽の顔を睨みつけ夜々を噴水から出すと自分の上着を着せた。
「夜々…行くよ…」
「ちょ、桜華…待って!!」
「ダメよ!!早く乾かさないと風邪引いちゃう…それに、夜々はあの男の事嫌いでしょ!!」
「そう…だけど…」
夜々の言葉を聞かず、桜華はいそいそと手を掴みながら公園から出ていった。
そこには、噴水の中で座っている太陽とケバブ屋のおじさんだけであった。
「オニイサーン、ヨカッタラタオルツカウカ~?」
「あ、ありがとうございます。」
ケバブ屋のおじさんは、噴水に近づいてきて太陽にタオルを渡した。
そのタオルで、上半身を拭きながら立ち上がり噴水から出た。
「ソレニシテモ、アノオジョウチャンスゴイキレイダッタネー」
「えっ?ああ…後から来た娘ですね~、クラスは違うんですけど…ボーイッシュですけど学校では男女関係なく人気な娘なんですよ♪」
太陽は、ケバブ屋のおじさんに桜華の話をした。
実際、桜華は学校では友達も多く、男性でも女性でも仲良くできるためとても人気はあった。
だからこそ、太陽に向けられた視線は普段では考えられないものであった。
「チガウヨーオニイサン」
「え?」
「ワタシイッタノ、サイショニオニイサンとイッショニイタオジョウジャンダヨ」
おじさんが言っていたのは桜華の事ではなく、さっきまで一緒に噴水でずぶ濡れになっていた夜々のことであった。
太陽はそれを聞いて、不思議そうな顔をしていると、更におじさんは話してきた。
「アノオジョウチャン、メガネヤカミガタでカオカクシテタケド、ホントはスゴイキレイネ、モウヒトリノオジョウチャンモカワイカッタケド、サイショノオジョウチャンガモットカワイイネ」
「あの春野さんが…?」
公園で太陽とおじさんが話しをしている間に、夜々は近くにある桜華の家に連れて行かれた。
桜華はそのまま、夜々をお風呂に入れさせ体を温めるように言った。
「…桜華…ありがとうね…」
「何言ってるの…夜々のためなら私は山を越え谷を飛びだよ♪服は乾かしておくから、とりあえずは今日買ったワンピース来てて♪」
「はーい♪」
浴室の扉越しに夜々と桜華は話をしていた。
夜々は、桜華の優しさに触れて感謝の気持ちを言葉にしていた。
桜華はその言葉を聞きながら、濡れた夜々の服を抱きしめながら返事をしていた。
「夜々…茅野くんに何かされなかった?大丈夫?」
「うん…ちょっと話をして、帰るときに二人でバランス崩しちゃって噴水に入っちゃった。テヘペロ♪」
「そう、ならよかった~~~。夜々はもっと気をつけないといけないよ~」
「分かってるって~も~、桜華は心配性だな~」
そんな会話をしながら、夜々はお風呂に入っていた。
少し経つと、桜華は自分の部屋に行き、夜々にお風呂から出たら部屋で話をしようと伝え待っていた。
お風呂から出た夜々は、今日買ったワンピースを来てドライヤーで服を乾かしていた。
髪型は後で桜華が整えてくれると言っていたので、下ろしたままにしてメガネも錆びないように桜華の家の洗浄機に入れておいた。
その間、桜華は部屋で一人ベッドに座っていた。
「…夜々…私ね…夜々にはずっと私だけが親友でいてほしいの…だって、皆に知ってもらいたくないもの…小学校の入学式の時に、初めて知り合った時からずっと思ってたもの…」
「桜華~♪入って大丈夫?」
「大丈夫よ~♪おいでおいで~♪」
お風呂から上がってきた夜々は、声を掛けると扉を開けて部屋へ入ってきた。
(夜々…貴方みたいな美しい娘、誰にも渡したくないもの…大好きよ♡フフフ…)
眼の前に現れたのは、黒髪ロングでくりっとした大きな目の綺麗な女性であった。
それは、普段の夜々からは考えられないほど…美女という言葉では安すぎると思うほどの美しい娘であった。