森のモンスター3
祝120PV!
3桁!めっちゃ嬉しいです!
結局、モンスターが動き出したのはそれから二時間後(真乃の体感)くらいだった。
というのも、モンスターは真乃の目の前で寝始めたのだ。
その間、真乃は暇つぶしに寝ているモンスターにひたすら浄化の力を使ってシャボン玉モドキを当て続けたり、一度は諦めたが、やることもないので仕方なく土を自分でどかしたりしていた。
しかし、やはり土をどかしていると直ぐに指が辛くなってしまう。
片手とはいえ、こんなに直ぐに指が痛くなるものなのだろうか、と真乃は疑問に思い始める。
モンスターは尻尾のおかげか容易く土を掘っていたが、真乃は土を掘ろうとしても上手く行かず、土を少し削る事しか出来ない。
土が硬いのかとも思ったが、モンスターが掘っている最中に飛んでくる土は少し水分を含んだもので、硬いものではなかった。
もう一度真乃は土を掘ってみるが、何故か指がそれほど硬くないはずの土の中に入って行けず、表面を削る事しかできなかった。
「変わった土だな……。モンスターにしか掘れないとか?いやでも、俺は表面を削るくらいだが、掘れてはいるんだよな」
考えても分からず、諦めた真乃はモンスターにシャボン玉モドキを当て続ける作業に戻る。
それは、もしかしたら起きてくれるかな〜、と言った期待があるからだ。
しかし、モンスターが起きることはなく、結局二時間も経過してしまっていた。
大声を出せばもっと早く起こせただろうが、これまでの反応を思い返すとあのモンスターは大声がとても苦手な様子だったため、実行できなかったのだ。
「キュウゥゥ〜〜」
小さな身体で伸びをするモンスター。
真乃がひたすら浄化の力を使った為か、その真っ白な毛並みはとても綺麗であり、なんだか、少し光っているようにも見えた。
「キュ?キュウ!キュッキュキュッキュ!」
モンスターも気づいたのか今まで以上に喜んでいるようだ。
真乃にもその喜びを伝えるかのように身体を擦り付けてくる。
「おうおう、良かったなぁ。見違えるほど綺麗になってるぞ。匂いもいい香りだし、綺麗にした側の俺も、そんなに喜んでくれて嬉しいよ」
そう言いながら真乃は自由になった右手でモンスターを撫でる。
もちろん、浄化をし、綺麗にしてからだ。
「キュウ〜〜」
撫でられているモンスターも、とても嬉しそうに目を細めている。
「さあ、その感謝の気持ちを込めて、ちゃっちゃと俺を掘り起こしてくれ」
「ギュ……」
真乃が本題を出すと、モンスターはとても嫌そうな声を出す。
「な、なんだよ。いくらでも浄化してやるって言ったろ?早く助けてくれよ」
真乃はそう言うが、モンスターはとてつもなく綺麗になった身体を、後で綺麗になるとわかっていても汚すのは嫌なようだ。
それもそうだろう。風呂から出てサッパリしたと言うのに直ぐに「後でもう一回風呂に入ってもいいから田植えしてきて」と言われているようなものだ。誰だって嫌がる。
「くっ……わかった!お前が一回土を掘る度に浄化してやる!これならその綺麗な状態を保ったまま作業できるだろ!」
「キュ……キュウゥ」
それなら、まあ、しょうがないけどいいよ、と言った感じでモンスターが答える。
モンスターが寝ている間、ひたすら浄化していた真乃だったが、いちいち【浄化】を念じなければならない為、なかなか面倒くさいのだ。暇つぶしに、とやる分にはいいが、やらなくてもいい場面でやるのは面倒だと感じてしまう。
「キュウ」
モンスターは頼まれた通り真乃を掘り出し始める。
モンスターが尻尾をピッケル型に変化させ、土を突いた瞬間に
(浄化!)
真乃が浄化をしほとんど汚れていないモンスターが綺麗になる。
「キュッ!?」
……モンスターは思っていたよりも真乃が浄化をしてくるのが速くて驚いているようだ。
「ふっ……お前が寝ている間、浄化を無駄撃ちしてたわけじゃないんだぜ?ひたすらお前を浄化しまくったおかげで、浄化を念じるスピードが最初と比べて格段に速くなったのさ!」
真乃はとても自慢げに語る。
「キュ……」
モンスターは何故か悔しそうな目をしている。
そして……
「バカお前ッ!急にペースあげんじゃねぇ!」
「キュウ!キュウ!キュウ!」
モンスターは真乃を掘るペースをどんどん上げていた。真乃も負けじとひたすらモンスターを浄化し続ける。そのペースは二時間前の時よりも格段に速く、あっという間に真乃の上半身の掘り出しが終わる。
だが、一人と一匹にそんなことに構っている余裕はない。
「うおおぉぉぉ!」
「キュウゥゥゥ!」
白熱する真乃とモンスターの速さ勝負。どんどん加速する両者は気づいていないが、真乃はもうすでに膝まで発掘されていた。そして、ついに……。
「終わったぁぁ!!」
「キュウゥゥゥ!!」
真乃は地面からの脱出に成功した。
縦穴から這い出た真乃は、かがんでモンスターと目線を合わせる。
「お前、なかなかやるな」
「キュウッ!」
真乃が言うと、モンスターは、そっちこそ!と言った風に答える。
両者の間には、お互いを認め合い、絆が生まれていた。
そして、真乃はとても強く輝くモンスターと笑い合った。
……とても強く輝く?
「えぇぇ!?なんでお前そんなに光ってんの!?」
「キュ?……キュウゥゥゥゥゥゥ!?」
一人と一匹の叫び声が森に響いた。
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