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森のモンスター2

結局、真乃はもう一度モンスターを【浄化】した。

「キュウ♪」

「頼むからもう跳ねないでくれよ……」

真乃にバカだと言われたモンスターだったが、流石に学習したのか跳ねて喜ぶ事は無かった。そのかわり……

「キュウキュウッ」

「懐かれてんだよな?これ」

真乃に身体を寄せて猫の様に懐いているモンスター。見た目は可愛いため、真乃は悪い気がしなかった。

「キュウキュウッ」

「案外可愛いなぁお前。癒されるわぁ……」

モンスターは綺麗になった身体を自慢するかの様に真乃に擦り付けてくる。

スリスリ スリスリ

スリスリ スリスリ

モンスターの毛が鼻をくすぐる。ほんのりと、石鹸のいい匂いがした。



……鼻をくすぐる?


「ってこんなことしてる場合じゃねぇ!」

「キュウッ!?」

突然大きな声を出した真乃。モンスターも声を上げる。ウサ耳が付いているため耳が良いのだろう。至近距離の大声に驚いているようだ。

「俺埋まったままじゃん!どおりでちっこい魔物の毛が鼻に当たる訳だよ!」

モンスターに襲われるという危機は去ったが、真乃は未だに埋まったままである。

「くっそ……どうにかして抜けださねぇと……」

しかし、と真乃は考える。今の真乃ができる事は【浄化】の力を使って物を浄化する事ぐらいだ。手足が一切動かず、抜け出す手段が無い。

「どうする……」

真乃は必死に考えるが、やはり、自分でどうにかするのは不可能のようだ。せめて、近くに誰かいてくれたら……。

「キュ?」

偶然、モンスターと目が合う。

「お前に頼んでもなぁ」

モンスターには小さな手足しかなく、土をかきだせそうに無い。爪もそれほど長く無いようで、真乃を掘り出す事は到底不可能だろう。ハンマー型の尻尾も、跳ねた時に真乃の顔に土を飛ばすだけだ。そのせいで真乃は何度か土が口や鼻に入っている。


土を飛ばす?


「それだ!」

「キュウッ!?」

先ほどのことがあり、少し離れていたモンスターだったが、突然の大声には驚いてしまうようだ。真乃へ抗議するような目を向けている。

「す…すまん……」

真乃も流石に罪悪感を感じてしまう。

「けど、話を聞いてくれないか?」

「キュ?」

モンスターが真乃に近づいてくる。どうやら、話を聞いてくれるらしい。

「お前の尻尾で俺の周囲の地面を叩いて抉ってくれないか?」

「キュウ……」

真乃は自分の提案を伝えるが、モンスターは乗り気ではない。大方、土によって汚れてしまうのが嫌なのだろう。

「頼む!終わったらいくらでも浄化してやるから!」

真乃からすれば、【浄化】の力を使うことにデメリットは無い。疲れるわけでも、なにかを消費するわけでも無いからだ。

「キュウッ?」

本当か?と聞くようにモンスターが鳴く。

「本当だって!なんなら、お前が汚れたと思ったら作業をやめてくれてもいい。その度にいくらでも浄化してやるよ」

「キュウッ!」

モンスターはとても嬉しそうだ。

そして、早速真乃の周囲の地面を叩いて抉っていく。

その際、モンスターは尻尾の形を変化させていた。

ハンマー型から、ピッケルのような先の尖った形になっている。

どうやら、尻尾の形を用途によって変えることができるらしい。

(どうなってんだあの尻尾……。てか、あいつ普通に俺との会話が成立してないか?動物の本能とかって思ってたけど、案外頭が良くてちゃんと理解してんのかな……)

真乃が思案している最中に、モンスターはどんどん地面を抉っていく。先ずは真乃の右側から掘っていくようだ。尻尾がピッケル型になったのもあり、思っていたよりも抉れるペースが速いが、一匹でやっているためまだまだ時間がかかりそうだ。

しかも、モンスターは二十回ほど地面を抉る度に真乃に浄化するように頼んでくるため、なかなか面倒くさい。


真乃の体感で三十分ほど経った頃、モンスターが真乃の右側ばかり抉っていたおかげか、ようやく真乃の右手が見えてきた。

「おおぉ!やった!これで少しは自分でも土を退かせるぞ!よしっ、このまま全身が出てくるまで頼む……って、あれっ?」

真乃がモンスターを見てみると、短い手足をだらしなく伸ばし、伏せの形でぐだーっとしている。尻尾も元のハンマー型に戻っている。

「フワァ〜」

「え?ちょっと、まだ片手だよ?まだ全然だよ?」

真乃がもう少し頑張ってよ、という風に話しかけるが、欠伸をしたモンスターはめんどくさそうな目を向けるだけだ。

「ケッ」

「あ!コイツ今あからさまに態度に表したぞ!」

文句を言っても、真乃はモンスターに助けてもらっている立場だ。しょうがないと自分に言い聞かせた真乃はようやく自由になった右手で土を掻き出していく。

しかし、片手だからか上手く行かず、直ぐに指が辛くなり諦める。

「だ、ダメだ……。アイツが元気になったらまたやってもらおう……」

木々の合間からはまだ日が高い位置で差している。暗くなるにはまだ早いため、真乃はモンスターがやる気を出すまでしばらく待機することにした。



ポイント評価などして下さるととても嬉しいです。泣きながら高速で反復横跳びして喜びます。

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