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頼れるルナさん

お久しぶりです

「さて、ルナの問題も解決した事だし、街に行こう!」

ルナの服が手に入り、お互いの呼び方が定まったところで、元春は提案した。

日は傾き始めており、早く移動しなければ夜になってしまう。

「何ですか、急に。今忙しいんですから黙っててください」

「……」

「あでっ!?何故デコピンを!?」

「何が忙しいだ!ルナの髪をいじってるだけじゃねぇか!」

「だって!サラッサラですよサラッサラ!触りたくなるでしょう!?」

「ならねぇよ!早く街へ向かわないと日が暮れちまうんだよ!森で野宿なんて俺はごめんだ!」

「むぅ……。確かにそうですねぇ」

クリシュは不満げな表情のまま元春に同意する。

現代社会で生きてきた元春には野営の知識などなく、女神であるクリシュも当然無い。

モンスターであったルナも、人の姿になっていてはモンスターの頃と同じように夜を過ごせば体を痛めたり、風邪をひいてしまうだろう。

「まぁでも、街の場所なんて知らないけどね」

当たり前である。元春は数時間前にこの世界に来たばかりだからだ。

「奇遇ですね!私もですぅ!」

クリシュも、本来転移するはずだった場所とは違うため、現在地が分かっていない。




「「HAHAHA!」」



「じゃねぇよ!どうすんだよ!」

「知りませんよ!……木の棒を倒して倒れた方向に進んでみます?」

「最終手段だな……。それで昔アダルトショップに着いた話する?」

「結構です!」

手詰まりになってしまい二人は半ば現実逃避気味に手頃な棒を探し始める。

「……二人とも何してるの?」

「なんだ?ルナ。今俺らは勇者の初期装備を探してるんだ」

「そうです。勇者になるにはまずひのきのぼうを装備するところから始めなければ「街の場所なら知ってるよ」

「「本当か(ですか)!?」」

ルナの言葉に、元春とクリシュは棒探しをやめて食いついてくる。

「勇者になるんじゃないの?」

「ならねぇよ、勇者になるにはオカリナが吹けないといけないことを思い出してな……」

「世界観バラバラですね……」

「で、街はどこにあるんだ?」

ルナ曰く、街はこの森を南に抜けた先にある道を東に進むと見えてくるらしい。

「でも、何で街の場所を知ってるんだ?さっきまで魔物だったのに」

「この森には冒険者がよく来るの。その冒険者たちがどこから来るかわかれば警戒しやすいでしょ?」

「それで、街の場所を調べた、ってわけか。魔物なのに頭いいんだな」

「ですねぇ」

ルナのお陰で街の場所がわかった元春達は、早速移動を開始する。

道中、魔物に出くわすかと思ったが、運が良いのか一度も出会うことなく森を抜けることができた。

それほど時間もかからず、どうやら元春達がいた場所は森の浅いところだったらしい。

「おっ!それっぽい道に出られたぞ!」

「森を抜けただけ。まだまだ歩くよ」

「うへぇ……」

慣れない森の中を歩いた事による疲労からクリシュが情け無い声を上げたが、気にせず三人で歩いて行く。

周りの風景は相変わらず木々が生い茂っており、目印になるようなものはない。

だが、分かれ道があってもルナは迷うことなく進んで行く。

「よく迷わないなぁ。道を完全に覚えているのか?」

「……もちろん」

「なんか間がなかったか?」

「心配しないで、大丈夫」

そう言ってルナはサムズアップしてくる。

「そうか、ならいいけど」

「……たぶん」

「ルナさん?」

一抹の不安をおぼえながら、三人は止まることなく進んで行く。

森の中の獣道と違い、車が一台通れそうな幅の道は元春の想像よりも歩きやすかった。

到達点でのクリシュの説明通りなら、馬車でも走っているためだろうか、道に凹凸や大きな石がほとんどない。

ルナ曰く、このペースでいけば日が暮れる前に街に着けるらしい。

歩きながら、元春は考えていた。

(俺自身を浄化した時、意識していなかっけどパンツに敷いたトイレットペーパーが消えていた……。俺に接している汚れた物を消したのか?)

「なに神妙な顔してるんです?」

「ん?いやな、浄化の力がどんなもんなのか考えてたんだ」

「な〜んだそんな事ですか!それなら、聞くのに最適な女神が近くにいるじゃないですか!」

「女神なんているわけねぇだろ何言ってんだ?」

「わざとですよねぇ!その反応!」

怒ったクリシュだったが、元春にはもともと説明するつもりだったため、素直に説明する。

「元春さんの力は、現段階では汚れを取り除くことができます」

「汚れを取り除く?」

「はい。例えば、手に砂が付いたとします。そこに浄化の力を使うと、その砂を取り除くことができます」

「じゃあ、もしその砂が綺麗で清潔な砂だったら?」

「元春さんがその砂を汚れだと思っていたら取り除くことができます」

「俺の認識によるのか」

「そうですねぇ。まぁ認識といっても元春さんが大雑把に汚れだと思っている物を取り除くだけなので、いちいち爪の垢や歯垢を意識しなくても大丈夫ですよぉ」

「そうか、楽でいいな」

そんな話をしていると、外壁のようなものが見えてきた。

「あれが街だよ。冒険者たちはいつもあそこから出てくるの」

「へぇ、立派な外壁だな」

四メートルを超える程の外壁で囲まれた街だった。

出入り口となっている門には行商隊と思われる馬車が何台か止まっていた。

門番が荷物の検査をしているのか、進行は遅い。

「外壁のある街なんてこんな所にありましたっけ……?」

「ん?どうした、クリシュ」

「な、なんでもないです」

(もしかして、本来の転移先からだいぶ離れた所なのでしょうか……。失敗したとはいえ、然程遠くないはずですが……)

転移の奇跡は発動に失敗しても本来の転移先から五キロ圏内に転移するようになっている。

女神の奇跡というだけあって、結構便利なものだ。

そのはずなのだが、クルシュには転移先に設定していた教会の五キロ圏内に外壁を持つ街があった記憶がなかった。

(私の記憶違いでしょうか。友人からは忘れっぽい性格とよく言われますし……)

「おーいクリシュ?ぼーっとしてるけどほんとうに大丈夫か?もうすぐで街だから、休むなら着いてからだぞ?」

「えっ?あぁ、すみません。少し考え事をしてました。大丈夫です」

「ならいいけど……」

行商隊の馬車が街へ入って行く。

荷物の確認が終わったようだ。

もう既に後ろに並んでいたため、元春たちの番だ。

さっきまで荷物確認をしていた門番が話しかけてくる。

「こんにちは、今回は何用で?」

「旅の疲れを癒しに来ました。オススメの宿屋とかってありますか?」

「大通りをまっすぐ行って右手に見えてくる『梟の止まり木』が個人的にオススメです。安くていい場所ですよ」

「わかりました、後で寄ってみますね。それでは「ところで」

ボロが出る前に話を切り上げて逃げようとした元春だったが、門番がそれを許さなかった。

「武器もないようですし、あなた冒険者ではないですよね?兎獣人の方とお嬢さんを連れて、どうやってあの魔物が出る森を抜けてきたんですか?」

(この門番、森の方面から俺らが来ていたのに気づいてたのか!……どうすっかなぁ。一度適当なこと言って引き返すか……ん?)

元春が悩んでいると、クリシュが突然前に出てきた。

「クリシュ?何を……」

「こんにちはです、門番さん。私たち、この人に街まで護衛してもらってたんです。この人、こう見えて魔法使いなんですよ?」

「へぇ、それは是非とも魔法を見せて欲しいもんだ」

(元春さん、地面に浄化を撃ってください!)

クリシュが小声で元春に頼んでくる。

元春はクリシュの意図が掴めなかったが、取り敢えず言われるがままにしてみることにした。

(意味わかんねぇけど、浄化!)

元春は少し離れた地面に向かって浄化を放った。







「通行を認めるよ。何か困った事があれば気軽に聞きにきてくれ」

「はい。ありがとうございました」

(よかったぁ。でも、なんで……?)

元春たちは街に入る事に成功した。

先ほどの地面には、草が生い茂っていた。


まだまだ続くよっ!

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