12話
「ルヴァル、来てもいいぞ」
そう彼が呼んだ瞬間。上空から大きな影と共に落ちる巨大な"生き物"。地面に音もなく着地した巨大な生き物を見た瞬間、硬直して思わず恐怖で目が離せない。
私が間近で見たことあるのは、檻の中なのだから。
そう、アレは…。
「…と、虎。」
檻の中でしか見たことない肉食獣。そう、見た目は虎なのだ。だか変わってるのは、2mくらいある巨大で真っ赤な体に黒と白の模様。背中あたりは不思議な模様になっている。瞳は、アルドと同じ青い瞳が私を見つめる。そして一番目にいくのは、大きな口からチラリと覗く牙。まるで宝石の様に光の反射で煌めく青の光に驚く。まるでサファイアだ…こんな宝石の様な牙を持つ獣なんて見たことは無い。見た目は恐ろしい肉食獣なのにどこか神秘的な雰囲気を持つ獣とアルドの関係が気になる。
「トゥラ?とは何だ?。コイツはそんな名前じゃないぞ…」
不思議そうな顔するアルドは、大きな獣の側に近づいては、足を優しく撫でる姿にまた驚く。
『アルバート殿…やはり令嬢が我を見て、恐怖で驚いている』
「えっ!?ユーリ、宝石獣知らなかったのか!?」
「え、え!?虎が喋った!?」
少し冷たい低い声が何処から聞こえるかと思ったらまさかの虎が喋ってた。この生き物は何だ!?アルドの声から長ったらしい名前が聞こえだがどういう意味だ??そしてその虎は危害を加えないのか??駄目だ、混乱して頭が痛い。こういう時に呼べば来てくれると思う"大人"を私は叫んだ。
「教えてイルフ先生!!!!!」
「俺は先生じゃねぇぞ姫さん」
「ぎゃっ!?」
突然背後で大地を震わすような不思議な声質を持つ、ベルベットボイスに吃驚するとイルフさんは、色気のない悲鳴だなと言われた。3歳の幼女に色気を求めるな。
燃えるような、いや、実際毛先が燃えてる。うねる様な紅い髪と炎を閉じ込めたような赤い瞳。少し尖った耳。褐色肌に赤と金の不思議な模様が上半身に描いてあるタトゥー。
首や腕やら足首に派手な金属のアクセサリーを沢山身につけ、腰には豪華な布を沢山巻いてあり、黒と金の装飾が施されたアラビアンパンツを履いている精悍な顔立ちの巨体で強靭な肉体美と派手な姿のおじ様こと、お父様の契約精霊である大地を司る炎さん。
何時だかお父様に呼ばれて紹介された以来、困ったら現れると言うイルフさんの言葉を思い出し、私は彼を呼んだ。
「…俺を呼ぶ時は、別の意味で呼んで欲しかったが。別に俺じゃなくてあっちの獣から聞けばいいだろ?」
イルフさんが呆れた顔で言うが、私は混乱してる。
そして突然現れたイルフさんの姿に何故かアルドが吃驚し、虎は口を開きっぱなしで多分驚いているのだろうか??
「大地を司る炎…父様から聞いていたが、初めて見た。」
『我は、上級の精霊の声質を初めて聞いたが、これは凄い…』
「…イルフさん上級精霊なんだ。へぇー。」
「そうだぜ、別に隠してたわけじゃねぇが…姫さん俺の凄さに惚れたか?」
いや、別に精霊なんてイルフさんしか見てないから上級精霊のどこが凄いのか分からないので惚れない。そう真面目に言えばイルフさんは、姫さんは面白いなぁと笑う。だからどこに笑う要素がある??
「その前にあの虎は、な、なに??」イルフさん背に隠れてアルドといる虎を見て言う。
「あれは、宝石獣。純度の高い人間が触れると恐れる魔石を持ち、魔力を持つ獣、魔獣の一種だ。姿形はそれぞれで人語を話し、人型にもなれる賢い獣だ。」
「…人型になれるの???」
「人型になった方が良かったか?」
「…え?」
聞いたことある少し冷たい低い声。だがさっきの声とは違う人間味のある声質にアルドの方を見れば、さっきの虎が消え、知らない男性がそこにいた。
「我はトゥラではなく宝石獣のルヴァルだ。アルドと契約している。」
■イルフの声質について。
分かりにくいと思うので説明。
イルフの声は、大地を震わす声。
地震程ではないですが、少し体が揺れる様な感じです。アバウトに言えば、自分の身体がバイブのような振動が来ると思えば良いと思います。
声量がでかい訳では無いです。
他の精霊も不思議な声質を持っており、精霊に名前を呼ばれると"小さな加護"が与えられます。
分かりにくかったら申し訳ないです。