10話
アーノルドくんに連れられ庭園に来たが、さてどうやって遊ぶのか??私の世界だと男女構わず鬼ごっこや縄跳び、かくれんぼとかしたけど…いや、人数が足りない。てか最近の子が外で遊ぶ事って何だ?いや、その前に貴族って外で何の遊びするんだ??
一人で悶々していたら、アーノルドくんが少し困った顔をしていた。
「どうかしましたか?」と聞けば、彼は苦い顔しながら「…あの、いえ…えと」と狼狽えていた。
多分、女の子とどう遊べばいいのか分からないだろうな。
大丈夫だ、少年よ。私も分からん。
その前に、ずっと敬語で喋るのも堅苦しい私は、アーノルドくんに声掛ければ、ビクッとされた。何故驚く。さっきの騎士のような姿は何処へ行った??
「ねぇ、同い年なら普通に話しましょ?堅苦しい喋り方すると疲れるの。あ、わたしのことはユーリとよんで!!」と笑顔で言えば、彼は緊張していたのかほっとした顔で笑う。
「おれも、堅苦しい喋り方苦手なんだ。ユーリな!!おれの事は、アルドってよんでくれ!!」
――――…
やっぱりさっきまで、堅苦しい喋り方に疲れたのかアルドは、芝生に寝転がった。
「…同い年だからって父様に言われて来た時、女の子だし、貴族の令嬢だし、面倒だと思ったけど…お前、喋り方からして令嬢に見えないな!!」と笑顔で言われて貶されているのか、褒めてるのか、そして面倒だったのかと普通に接してくれたのは嬉しいが、何とも言えない気持ちになった。
令嬢に見えないと言われたので、私はもう遠慮なく芝生に寝転がる。まだ子供だから許せるはず、大丈夫、10代になったら立派な令嬢になってやるからな…目標、お淑やかな令嬢。目指せ、玉の輿。
アルドは、私が寝転がった事に驚いたが(なぜ驚く??)無視した。どうせ令嬢に見えないやらなんやら言うはずだ、もう自覚してるからこれ以上言われたくない。
そして数時間、何も語らず二人で空を眺めてた。
「…ほんとお前、令嬢って柄じゃねぇな」
「…貴方も貴族って柄じゃないわね」
二回も貶されて私は地味に心折れそうだよ。さっきから何を言いたいのか分からない少年の顔を睨む。
「父様にもよく言われる…元気があって嬉しいと褒めてるけど、礼儀はいまいちだって…」まぁ、まだ子供だから許せる礼儀だってあるだろ?と笑顔で言う。
精神年齢+3歳の私よりも歳下の癖に子供らしくない考えに驚く。3歳の子供はそんなこと言わない。とても不思議だ。
「俺の家系は、王宮に仕える騎士の家系だから、俺の年齢になると騎士としてのマナーとか早いうちに学ぶんだ、そして五歳になると王宮で王様に会って挨拶する。だからこの5年間子供らしい遊びなんて中々出来ない。」
突然自分の家系について語るアルド、まだ3歳なのに立派過ぎて開いた口が塞がらない。
「なのに、突然呼び出されたら令嬢と仲良くしろと言われて…兄さんから令嬢について聞いたから、令嬢の我が儘に付き合うのが面倒で本当は行きたくなかった。でも本人に会って話して見れば令嬢らしくない。それが俺にとって嬉しくて…」少しの間を置いてからアルドは私の顔を見る。
「…俺は、貴族とか階級とか関係ない。ちゃんと俺を見て気楽に話せる"友人"が欲しかった。まぁ、まさかその友人になるのが令嬢だと思わなかったのが誤算だったけど…」話せてすっきりしたのか、緊張した笑みではない彼本来の笑顔で笑う。
彼は、まだ幼いとは言え、心許せる友人が居なかった。多分彼の父親は、彼に友人を作らせる為に連れてきたのだろう。普通は、男の子の方がよかったと思うが。
「改めて自己紹介させてくれ、アーノルド=ローヴァンシェだ。ユーリン嬢、俺はお前と仲良くなりたい。」
彼の真面目な『友達になりましょう』は、その辺の少年ではない、貴族特有の喋りだが何故かその態度に思わず笑った私は悪くないと思います。
見た目は、可愛い男の子。
アルドくん。まだ3歳です。