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その1
その魔人はまさに厳だった。
褐色の筋骨隆々たる七尺五寸の巨体は、魔人を初めて見る者に恐怖を植え付ける。いついかなる時も、眉間には幾本の筋が走り、口は横一文字に引き結ばれている。そんな厳めしいという言葉では形容しきれない顔には、古木の幹のしわのような古傷が十文字に刻み込まれている。その傷の深さは尋常ではなく、まるで消し去ることのできない敗北者の烙印のようだ。
しかし、魔人はその傷を嫌悪しない。
ただ、自らの前に現れた挑戦者にその傷が刻み込まれた頬を吊り上げて不敵に笑い、言うのみ
「よくぞ、ここまで来た。だが、ここを通りたくば、我をーーグァッ!? ちょ、ちょっと待てっ!! この台詞言い終わらないと攻撃できなーークベラッ!? いや、だから、言いーーガハッ!! グホッ!? だ、だから最後まで言わせろっーーフベラッ!?!?」
気まぐれ更新ですが、よろしくお願いいたします