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法月先生は、遅刻者に容赦ない

「……」


目の前に京介が今日から所属することになる、1年Xクラスのドア。が、京介はノックをするのを躊躇っていた。


「すいませーん。道に迷ってしまって遅れました」


ワイスは当たり前のように扉を開けて言い放った。


「貴様ら、初日から遅刻とはいい度胸だな。いい機会だ、時間に不正確な奴がどのような末路をたどるのか、クラス一同よく見ておくと良い」


 教壇に立つ女が鋭い眼光で京介達を射抜き、凄みのある声で言った。

と同時に、おもむろに懐に手を入れて何やら取り出そうとしていた。


「えぇえええぇぇええ!? 何!!? 何だそうとしてんの?! 末路ってなんだよ? まさかいきなり銃でもだそうってのか?」


 ヤバい。京介は焦った。と、そのとき後ろに気配を感じて振り向くと、そこには京介を盾にして、ワイスがでかい体を縮めてガクブルしていた…っておい!!


「……まあ初日でもあるし、今日はこんなところで良いか」


 そう言って女は懐から手を出した。その手には何も握られてはいなかった。(つーか、初日じゃなかったら一体何が出てきてたんだ)


 よく見ると女の懐は不自然に膨らんでいる…。何が入っているのか想像するのも嫌だった。


「私がこのクラス担任の法月だ。遅刻者共、自席は分かっているな? さっさと座れ」


 そう言って法月と名乗った教師らしいその人はクラスメイト一同の方へ向き直った。


 これはさっさと着席しないと本当に殺されかねない。そう思って京介、ワイスはそそくさと着席した。


「はい、じゃあ改めて出席をとりま~す。呼ばれたら返事をしてください」


 え?? さっきとキャラが全然違うんだけど…。。クラスの空気が戸惑い一色に染まる。


「浅月、植月…大月」


 法月は何事もなかったかのように、淡々と一人一人名前を読み上げる。


 しかし、座席表を見たときも思ったが、改めて思う。

ほぼ全員月が名字についているせいで覚えにくい。座席表は月だらけでカオスだ。これは法月先生も生徒の名前を覚えるのが大変だろうな、と京介は一瞬思ったが、そもそも今生徒をアレしようとした教師がそんな努力をする訳ないな、と思い直す。


 と、京介は何気なくクラスを見まわし、その異次元っぷりに驚いた。驚いた……。


 映画でしか見たことのないようなごつい武器を机に立てかけている男子や、いい年してぬいぐるみ抱いている女子、さらには机の上にわら人形と釘を並べているヤツなど、ぱっと見ただけでも異常な光景だった。


「型月? お~い。返事してくださ~い。無視するとどうなっても知らないよ~?」


 京介がきょろきょろと教室内を見回している間も出欠確認は続いていく。そんななか、法月がまた懐に手を入れようとしていた。


「う~い、この娘が型月や。よろしくな!」


 その時意味不明なことが起こった。型月と呼ばれていたのはぬいぐるみ女子だった。

しかもたった今返事したのは本人でなく、ぬいぐるみの方。何と、ぬいぐるみがおもむろに立ち上がり、片手を振って先生に応じていた。ていうかこのぬいぐるみ、ちょっとキモ怖い。顔はウサギ? で体は人。そんなシュールなぬいぐるみを後生大事に持ち歩いているなんて……って問題はそこじゃない。なんでぬいぐるみが動くの? しゃべるの?


「へ~、型月はもう√(ルート)が使えるのか~、優秀ね。良し、では次…」


 そう言って何事もなかったかのように法月先生は出欠確認を再開した。何で今の異常事態をスルー? やっぱりこの学校変だよ。おかしいよ!


「…長月…二条…お、血統者(アムニス)がうちのクラスにいるとはな」


 二条。この学校の生徒で名字に月が付いていないということは、家族がいて親が健在な人、ということになる。この学校の生徒はほとんどが政府預かりの子供、名字なし(ノーバディ)で構成されていると思ったが、珍しい。


 二条と呼ばれた女の子はうつむいて掠れるような声で返事をした。ルックスは京介ランキングで言えば文句なしにSSクラスに入るほどだ。―ちなみにSSSが最高ランク― 左目の包帯が気になるが、それがまたよく似合っている。読書姿とかが超様になりそうだった。しかし―


「おい、月見里。聞いているのか? 月見里! ちっ、仕方ないな」

「うわ!? はい! 月見里です!」


 一拍遅れて京介は返答した。法月は再び懐に手を入れてたので、危ない所だったようだ。


「……はい、以上。欠席は1名だけ、か。じゃホームルーム終わり。自己紹介とかメンドーなことは自主的にやってといて。私は生徒の自由と自主性を尊重する先生です! アデュ~」


 そういって法月は教室から出ていった。


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