ステータス
能力値に関する話です。
『おい、相棒』
「何だよ、アース」
これから第二の人生という名の異世界大冒険を始めようってのに、出鼻を折るなよ。
『冒険を始める前に、ちょいとお前さんのステータスを見てみようや』
「ステータス?」
ゲームでいうHPやMPみたいなものか?
『ああ。「龍神格化」のオプションでな。この世界では基本的に生物の能力は数字で表せる。ただし、それらの計測には特殊な道具が必要だし、道具を使っても計測できない数字もある。だが、お前は違う。ちょいと能力を発動させるだけで、自分や他人の能力を見ることが出来るって訳だ』
なるほど。
じゃあ、俺は他人の能力が見放題って訳か。
あれ?
プライバシーとかねえの?
『あくまで能力値や職業、種族とかしか見れねえよ。個人の秘密を見る能力ってのは、精神透視系の魔術であるにはあるけどな』
そういうのに出逢ったら、俺が異世界人だってバレるんじゃないか?
『バレるだろうが、その時はその時だろ。お前の他にも異世界人はいるみたいだしよ。まあ、そいつらが派手に暴れて異世界人に対する印象が悪くなることがないとも言えない。その時は、国家と戦争だな』
「戦争かよ!」
『喚くな。今のお前を倒せる奴なんて、まずいねえよ。国家軍隊と戦うことになっても、全世界の主要国家が連合でも組まない限り、お前を殺すことは出来ない』
お、俺、そこまで物騒な存在になっていたんだな。
もはや、人間じゃなくないか?
『ああ。お前はどちらかと言えば、人間というよりドラゴンに分類されるだろうな。どちらかと言えば』
知らない間に、人間捨ててたのかよ!
『うるせえよ。とにかくステータスを見てみろ』
「ああ。って、どうすれば見れるんだ?」
『人差し指をステータスの見たい相手に向けて、「ステータス」と言えばそれでいい』
俺はアースに言われる通り、自分を指差して、
「ステータス」
と呟いた。
すると、目の前に文字と数字の羅列が展開された。さながら、SFのテレビ映像だ。記憶がないから、イメージだけど。
○斉藤龍馬
●種族 人間 龍神
●職業 異界人
●属性 無
●体力700 攻撃466 防御460 反応450
魔力600 知力 91 気力517
素質940
●スキル 『全能制覇』『龍神格化』『功罪誘発』
●称号 『無限龍』
このステータスを見て最初に思ったのは、レベルって概念はないのか、ってことだった。
『この世界では、あらゆる生物あらゆる物体に「属性」がある。大半は「火」、「水」、「土」、「風」だ』
世界を構成する四大元素か。
分かり易い。
『ごく稀に、一部の上位生物が「光」や「闇」を持っていることがある。人間でも将軍クラスの大剣士や高名な魔術師などが持っている時がある。ちなみに「光」や「闇」の属性を持つ者は四属性のどれかを持っていることがほとんどだ。仮に出逢った場合は、もう一つの属性にも注意しろよ』
「ああ、それはいいけどさ、俺の属性って、四元素でも『光』でも『闇』でもなくて、『無』なんだけど」
それから、『称号』のところにある『無限龍』って何?
『属性も称号も、俺の「原型」に深く関係しているな。この世界で唯一、例外的な例外だった存在。それが俺の「原型」だ。まあ、有名な存在のはずだから、その内知ることになるって』
どうやらアースから話す気はないらしい。
いや、別にいいけどさ。
「じゃあ、今度は数字についてだ。俺のこれって、高いのか?」
『破格の能力だな』
アースは自分のことを自慢するように、断言した。
『まず、体力の700だが、これだけでも化け物だ。普通の人間なんて、戦士でもない限りは100を超えないんだぜ?』
「そりゃすげえな」
『これは他の数値にも関係しているんだが、あらゆる数値の上限は999だ。まあ、四大竜王ですら800代だった。言っておくが、お前の700って数字は100の七人分とは違うんだぜ?』
ん? 違うのか?
『ステータスの数字ってのは、300刻みでな。299と300は別物だ。例えるなら、ミツバチとスズメバチだな。300の一人分は、299の十人分だ』
た、たった1の違いで、そこまで?
『早い話、壁なんだよ。能力が向上しない壁って奴。才能という言い方も出来るか。300になれるかどうかで、そいつが天才か凡才かが決まる』
何か、普通にテストみたいで嫌だな……。俺が元の世界で勉強嫌いだったかどうかは覚えていないが、そういう風に感じるってことは嫌いだったんだろう。
ステータスの中でも、知力だけがアースの言う『300代の壁』を破っていないしな。
『そして、300の壁を突破しても次には600の壁がある。600の一人分は、599の百人分だな』
また極端な。
『そして、900の壁なんてのは竜王でも越えられない。その壁を越えた存在は、二体の竜神と俺の「原型」だけだ。あるいは、お前もなのかもしれないが』
「…………」
神様が言っていた。
俺は博打だと。それは、『龍神格化』を与えたこと?
『特に、「魔力」なんてのは500あれば異常と言えるだろうな』
「え? 600の壁を越えてないのにか?」
『ああ。「魔力」と、それから「素質」限定で、さっきの数値の話は違ってくる。竜王が500後半だったからな。竜神でも700の前半だった。そう考えると、分かるか? この世界の頂点でも、限界値の四分の三なんだぞ?』
つまり、今の俺の魔力は、竜王以上竜神以下って値なのか。
とんでもねえチートだな。魔法も魔術も錬金術も知らないけど。
「それで、素質ってのは?」
『「素質」は言葉の上での説明が難しいな。だが簡単に言うことも出来る』
「どっちだよ」
『早い話、「いざって時にやれる可能性」だな』
「確かに、分かり易いような難しいような……。それこそ、主人公の素質って奴なのかねえ」
『かもしれんな。だが、お前の940って数字は異常どころの騒ぎじゃない。「素質が高い」はイコールで、「やろうと思えば何でも出来る」ってのと同じことなんだぜ?』
そ、そりゃすごいな。
あ、もしかして、これが『功罪誘発』のメリットか?
『おまけに、見た能力を模写して自分の物にする、「全能制覇」だっけか? それもあるんだから、お前には無限な意味で「不可能がない」な』
俺はどこのナポレオンだよ。
まあ、あれってナポレオン本人が言った訳じゃないんだよね。と、俺の知識を司る脳の部位が言っております。
『さしあたって、何をしようか。相棒よ』
「何でも出来る、か。そう言われると困るなあ。色々やりたいことはあるけど、何でもやれるってなると答えが出ないな。前世の記憶もないし」
『じっくり考えろよ。面白いことなら付き合ってやる』
つまり、つまらないことなら付き合わないってことだ。
神が言っていた『龍神格化』の暴走モードになった時が怖い。その為にもまずは、素手以外で戦う術を手に入れたい。
やっぱり、ファンタジーの世界なんだから、魔法を覚えたいな。弟子を取りたい魔法使いは、近くにいないだろうか。
「とりあえず、人を探そうか」
冒険者ギルドみたいなのがあれば、是非加入したい。
「さあ、冒険だ」




