ペットな彼
私の家には、一匹の犬が住み着いている。
名前はまだ聞いていない。
これから聞く予定もない。
会話はおはよう、とかおかえりとか、そんな程度の挨拶を交わす程度。
私が大学とバイト先を行き来している間、彼が何をしているのか私は一切関知していない。
恐らくは、テレビゲームかコンビニで立ち読みでもしているのだろう。
尻尾のついていない彼を拾ったのは、燃えないゴミの日だった。
ボロボロな身なりをしていた彼を、酔っ払っていた私は家まで運び入れてしまった。
彼は私を襲ってこなかったし、私が何をしても無関心だったようなので、私も彼を放っておいた。
そして、なあなあと過ごすうちに、彼はここに住み着いてしまった。
家事は一切しない。
手伝えと言えば、むくりと起き上がるが、たいがいは寝そぼっている。
このままじゃあ、だめだ。と思っていても、私にはどうしようもなかった。
だって、なんかワクワクしたから。
両親の言われるがままに、レールの上を歩いてきた私に、初めて訪れたイレギュラー。
名前も知らない彼と同居しているのが、両親にばれてしまったら卒倒してしまうだろう。
なんだか、そんな状況がスリリングで、ちょっとおかしくて、人生のレシピにスパイスを与えてくれているようで、うれしかった。
そんなぐだぐだなある日、彼が家からいなくなってしまった。
その内帰ってくるだろうと思い、放っておいたけれど彼は一か月経っても帰ってこなかった。
彼の連絡先を知らない私は焦った。
そこら中を走り回って、見知らぬ人間に聞きまわりながらも彼を探した。
だけど、やめた。
よくよく考えれば、彼のことを探して私はどうするつもりだったのだろう。
年齢が同じぐらい、それから住む家に困っているぐらいしか、彼のことを知らないのだ。
それからまたとある日。
バイトの夜勤が終わり、へとへとに疲れ果てて帰ると、彼が居座っていた。
なんで入ってこれたのかと聞くと、合鍵を見せてきた。
そういえば、私……渡したかも。
彼はピカピカなカセットコンロを携えていた。
どうしたの、それ? と聞いてもやっぱり彼は答えてくれなかった。代わりに、鍋しよう。と言ってきた。
そういえば、もうすぐ冬だ。
最近、何の楽しみもないから、思考停止してカレンダーにすら目を通していなかったから、季節のことなんて全く考えていなかった。
材料をほい、と手渡される。どうやら今からやるらしい。
ベッドに横になりたいと思ったが、まあいいかと台所に立つ。
どうせ、材料を切るのは私の仕事なのだ。
私は彼の名前をまだ知らない。
だけど、この冬はお鍋のおかげで温かく過ごせそうだ。
なんかいきなり思いついたから、10分ぐらいで書いたwww