プロローグ
奴らはある日突然現れた。
奴らは海から、地中から、空から現れた。
奴らは魚のような、虫のような、カエルのような、トカゲのような、鳥のような、獣のような姿をしていた。
だが、奴らは決して虫でも、魚でも、カエルでも、トカゲでも、鳥でも、獣でもない。
色々と差異はあるが、決定的に違うのはその大きさ。
奴らの体長は小さなモノでも3~5メートル、大きなモノになると50メートルを超す個体も存在した。
奴らは人間たちの前にいきなり現れると、破壊の限りを尽くした。
町を、村を、都市を。それは瞬く間に灰燼に帰さしめた。
町の中にある静かな住宅街。村に広がる豊かな田園。都市に並ぶ高層ビル群。人類の叡智と繁栄の象徴とも呼べるそれを、奴らは牙で、爪で、尾で破壊した。
なぜ奴らが破壊を繰り返すのか、誰にも分からなかった。
ある学者は、奴らには破壊衝動しかないからだと言う。またある学者は、驕り高ぶった人類に対する自然からの報復だと主張した。
そんな奴らの前には、人類の兵器群は殆ど役に立たなかった。
拳銃はおろか重機関銃クラスの火器では、奴らの頑強な皮膚や鱗を貫くのは容易ではなかったのだ。
戦車の主砲、戦闘機のミサイルクラスの兵器を用いることで、ようやく奴らに有効打を与え得ることが可能なのであった。
奴ら。
昆虫のようで昆虫ではなく、魚類のようで魚類ではない。両生類に似ていても両生類とは言いがたく、爬虫類や鳥類といくつか類似点があるものの、決して爬虫類や鳥類ではない。そして勿論、ほ乳類でもない。
突如人類の前に現れた、動く災厄とも言える奴ら。
そんな奴らの事を人類はこう呼んだ。怪変異性巨大獣──略して『怪獣』と。
現時点で、自分のもう一つの執筆である「虹風のアルカンシェ」が完結を迎えていないというのに、もう一つ連載を立ち上げてしまう愚かなムク文鳥です。
この作品もそんなに長くはならないと思いますが、取り敢えず本格的に始動するのは「アルカンシェ」が終わってからになると思います。
どうぞよろしくお願いします。