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優雅なマインスイーパー

指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

「室矢様のお世話を命じられた、バーンズと申します」

「同じく、メイソンです」


 2人で、頭を下げる。


 現在は、室矢家の一行、正確には名字が変わったカレナを出迎えた後。

 敷地内にある、ゲストハウスだ。


 ウィットブレッド公爵家の当主が出迎えて、本邸の煌びやかな執事、メイドたちも並ぶ中、すみに立っていただけ。


 今になって、ようやく自己紹介……。


 用があるか、公爵家から呼び出しがあった時だけ、応対。


 けれど、カレナと室矢重遠を見極めなければ、動きようがない。


 フローラ・テレサ・バーンズが、最優先のタスクを考える。


(予想通り、カレナ様は公爵家の晩餐(ばんさん)に呼ばれた……)


 言うまでもなく、フローラの担当。


 公爵家の会話でスケジュールを探り、準備しなければいけない。


 ゼフィ・デ・メイソンに、声をかける。


「ゲストハウスは、任せたわよ? 分からないこと、すぐに確認できないことは、私に聞くという名目で時間を稼ぎなさい」


「はい、フロア長!」



 ――本邸 大食堂


 長机にズラリと並ぶ、銀食器。


 室矢カレナの後ろ、壁際に立っているフローラは給仕するも、覚えたばかりの知識と周りの動きで何とかついていく。


 いきなり本題に入るのは無粋で、世間話をはさみつつ、コース料理が進むだけ。


 上座にいるウィットブレッド公爵は、息を吐いた。


「私が目にするとは、思わなかったぞ?」

「……変わっておらんな、ここは」


 地球の裏側に嫁いだような娘と会ったわりに、事務的。

 カレナが幼いにせよ、公爵と対等に話しているのは、納得できず。


 夫人、その娘も、どちらかと言えば、怖がっている様子……。


 食後としての紅茶のカップを置いた公爵が、率直に尋ねる。


「日本土産はなかなかに興味深いが、どうするつもりだ?」


「留学にやってきた重遠の付き添いじゃ! ついでだから里帰り、という意味もあったが……。重遠は、爵位を欲しいそうだ」


 大食堂の空気が、張り詰めた。


 公爵は、探るように問う。


「お前の義理の兄が?」

「そうだ!」


 息を吐いた公爵は、首を横に振る。


「無理だ! 日本でどうだろうが、ここはユニオン! せめて、欧州で縁組みなりの理由を示してもらわなければ……。中世なら、公爵は子爵、男爵の爵位を併せ持ち、領地を預かる代官としての慣例的な爵位もあろうが」


 注がれた紅茶を飲んだ公爵は、肩を上下させる。


「お前には、騎士爵があるだろう? そのエスクワイア(従騎士)として扱えば、準貴族だ」


 ハラハラするフローラに対して、カレナはあっさり答える。


「そうだな……。悪いが、お主の口から言ってくれ!」


 嘆息した公爵は、しぶしぶ頷く。


「致し方あるまい……。返事は、変わらんぞ?」


「構わん! プリシラと会うかは未定だ。重遠の反応を見たあとに、決める」


 ため息をついた公爵が、呆れる。


「お前という奴は……。分かった! 明後日までに、時間を作る」


「よろしく頼む! 公爵家に迷惑をかけん。そもそも、プリシラとは個人的な付き合いだからな?」


 その説明で、かろうじて和やかな空気へ。


 公爵が立ち去り、夫人と娘も。


 それに続く形で、カレナも大食堂を後にする。


「ジェニファー! 少し、いいか?」


 立ち止まった本人が、母親を見る。


 首肯されたので、カレナに向き直った。


「何でしょう?」


「たいしたことではない……。久々に足を踏み入れたから、案内が欲しくてな?」


 後ろで控えているフローラの耳元で、地獄の底から響くような、小さな声。


「ミス・バーンズ? 女王陛下と親交があるカレナ様のお世話、よろしくお願いしますね?」


 忘れたくても忘れられない、公爵家のハウスキーパーの声だ。


 ハッと振り向けば、彼女はすでに離れていた。


 もはや、怪奇現象と同じ。


(噓でしょ!? 公爵家から追い出されたような令嬢が、女王陛下を呼び捨てにできる仲って……)


 今になり、プリシラの名前と繋がった。


 立っている床がグニャリと歪んだような錯覚を覚えるも、何とか堪(こら)える。



 ――数日後


 公爵と室矢重遠の対談は、スムーズだった。


 事前に聞いていた公爵は大人の対応で、心配された重遠のワガママもなく。


 話の流れで、公爵がロンドン滞在の費用を負担することに。


 室矢カレナの後ろで立っているフローラは、密かに感心する。


(へえ? 無理なお願いと分かっていて、これを狙っていたなら、面白い子ね!)


 たぶん、重遠はそこまで考えていない。


 ともあれ、公爵を激怒させるルートは、これで消えた。


 そっと見れば、ゼフィも上手くやっているようだ。


 重遠はネイティブ並みの英語を喋っていて、意思疎通で問題なし。

 女と見るや抱きたくなる色情魔ではなく、素直。


(よしよし! 何とか、乗り切れそう!)


 微笑みで固定しているフローラは内心で喜ぶも、その日の夜に、事態は急変する。


 ジェニファーが倒れたうえ、命の危険があると、分かったのだ。


 メイド2人は、室矢重遠の恐ろしさを思い知ることに……。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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