魔物だらけの無人島に流れ着いたけど俺の職業「コック」がチートすぎてバカンスになりました
短編小噺シリーズ
「お前、本当に役立たねぇな」
勇者パーティーの船内で、ロイドは今日も雑用を押し付けられていた。
皿洗い、洗濯、食事当番。
戦闘では後衛にすら入れてもらえない。
理由は単純。
彼の職業が《コック》だったからだ。
この世界では、生まれつき“職業”が与えられる。
《剣士》《魔導士》《聖騎士》
強い職業ほど価値が高い。
そんな中は完全なハズレ扱いだった。
「魔王討伐に料理人とか意味ある? 」
仲間たちは笑う。
ロイドも反論しなかった。
実際、戦闘能力はほぼゼロだったからだ。
そんなある日、魔王領へ向かう航海中、巨大海魔クラーケンが船を襲撃した。
嵐。悲鳴。崩壊する甲板。
混乱の中、ロイドは海へ投げ出される。
そして――。
目を覚ました時、彼は見知らぬ島へ流れ着いていた。
周囲から聞こえるのは、獣の咆哮。
森の奥では巨大な影が動いている。
「あ、これ死んだわ」
地図にも載っていない魔境。
魔物だらけの無人島だった。
ロイドは空腹だった。
三日間まともに何も食べていない。
そんな中、ロイドの前へ巨大な猪型魔物が現れる。
全長三メートル。
牙だけで人を串刺しにできそうな怪物。
「終わった……」
しかし次の瞬間。
ロイドの頭に、不思議な情報が流れ込んできた。
《ボアキング》
肉質:A
推奨調理法:炭火焼き
弱点部位:首裏
「……は? 」
なぜか“食材情報”が見えていた。
そして身体が自然に動く。
落ちていた石を投げ、偶然にも弱点へ命中。
ボアキングは倒れた。
「えぇ……? 」
さらに驚くべきことが起きる。
《コックスキル:調理》発動
解体速度上昇。
鮮度維持。
魔力抽出。
気づけばロイドは、流れるような手際で魔物を解体していた。
数十分後。
焚火の上で焼き上がる極厚肉。
一口食べた瞬間――。
「うっっっま!!!!! 」
肉汁が溢れる。
しかも食べた瞬間、身体能力まで上昇した。
《魔食効果:筋力強化》
「コックって料理職じゃないの!? 」
違った。
《コック》は、“食材の力を最大限引き出す職業”だったのだ。
その日から、ロイドの無人島生活が始まる。
火竜のステーキ。巨大カニ鍋。スライムゼリー。
気づけば彼は、魔物を狩るのではなく“食材探し”を楽しむようになっていた。
「……これ、案外バカンスでは? 」
数か月後。
魔境だった無人島は、完全に変貌していた。
木造コテージ。天然温泉。巨大露天キッチン。そして大量の保存食。
ロイドは完全に南国ライフを満喫していた。
そこへ新たな遭難者が現れる。
獣人少女ミーナ。
冒険者パーティーが壊滅し、島へ流れ着いたらしい。
「た、助けて……」
瀕死だった彼女へ、ロイドは料理を振る舞う。
特製ドラゴンスープ。
するとミーナの傷が一瞬で回復した。
「え!? 回復魔法より効いてる!? 」
《魔食》には回復効果まであったのだ。
帰国したミーナによってその噂は徐々に広がっていく。
遭難した冒険者。腕利き商人。さらには――。
「ククク、人間よ。我を食うつもりか? 」
島の主である古代竜ヴァルグレイアまで現れた。
だがロイドは真顔だった。
「いや、どっちかというと一緒に飯食う? 」
「……は? 」
結果。
古代竜すら料理に胃袋を掴まれた。
「こ、この肉料理……神か? 」
気づけば無人島は、世界中の猛者が集まる“伝説のグルメ島”になっていた。
ある日。
かつてロイドを見捨てた勇者パーティーが島へ辿り着く。
彼らはボロボロだった。
「ロイド……生きていたのか」
「助けてくれ……」
魔王軍との戦いに敗れ、逃げ延びてきたらしい。
ロイドは少し考えた後、普通に料理を出した。
超高級・海竜フルコース。
勇者たちは涙を流しながら食べる。
「うますぎる……」
「今まで食った飯と次元が違う……!」
そして料理を食べた瞬間、全員の能力値が爆発的に上昇した。
《魔食効果:全能力強化》
勇者が震える。
「ロイド……お前、最強じゃないか」
ロイドは首を傾げた。
「え? コックだけど?」
後に、魔王すら「飯食わせてくれ」と島へ訪れるようになり、無人島は世界一平和な危険地帯として有名になる。
そしてロイドは今日も、南国の浜辺で新作料理を作っていた。
「さて、今日は巨大タコのアヒージョでも作るか」
戦わない。争わない。ただ美味い飯を作る。
それだけで世界最強になってしまった男の、自由すぎる異世界バカンスは今日も続いていく。
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