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短編小噺シリーズ ~評価の高いものを連載化させます~

魔物だらけの無人島に流れ着いたけど俺の職業「コック」がチートすぎてバカンスになりました

作者: 雪丸
掲載日:2026/05/10

短編小噺シリーズ

「お前、本当に役立たねぇな」


 勇者パーティーの船内で、ロイドは今日も雑用を押し付けられていた。


 皿洗い、洗濯、食事当番。

 戦闘では後衛にすら入れてもらえない。

 理由は単純。

 彼の職業が《コック》だったからだ。

 この世界では、生まれつき“職業”が与えられる。

 《剣士》《魔導士》《聖騎士》

 強い職業ほど価値が高い。

 そんなコックは完全なハズレ扱いだった。


「魔王討伐に料理人とか意味ある? 」


 仲間たちは笑う。

 ロイドも反論しなかった。

 実際、戦闘能力はほぼゼロだったからだ。

 そんなある日、魔王領へ向かう航海中、巨大海魔クラーケンが船を襲撃した。

 嵐。悲鳴。崩壊する甲板。

 混乱の中、ロイドは海へ投げ出される。

 そして――。

 目を覚ました時、彼は見知らぬ島へ流れ着いていた。

 周囲から聞こえるのは、獣の咆哮。

 森の奥では巨大な影が動いている。


「あ、これ死んだわ」


 地図にも載っていない魔境。

 魔物だらけの無人島だった。




 ロイドは空腹だった。

 三日間まともに何も食べていない。

 そんな中、ロイドの前へ巨大な猪型魔物が現れる。

 全長三メートル。

 牙だけで人を串刺しにできそうな怪物。


「終わった……」


 しかし次の瞬間。

 ロイドの頭に、不思議な情報が流れ込んできた。


 《ボアキング》

 肉質:A

 推奨調理法:炭火焼き

 弱点部位:首裏


「……は? 」


 なぜか“食材情報”が見えていた。

 そして身体が自然に動く。

 落ちていた石を投げ、偶然にも弱点へ命中。

 ボアキングは倒れた。


「えぇ……? 」


 さらに驚くべきことが起きる。


 《コックスキル:調理》発動


 解体速度上昇。

 鮮度維持。

 魔力抽出。


 気づけばロイドは、流れるような手際で魔物を解体していた。

 数十分後。

 焚火の上で焼き上がる極厚肉。

 一口食べた瞬間――。


「うっっっま!!!!! 」


 肉汁が溢れる。

 しかも食べた瞬間、身体能力まで上昇した。


 《魔食効果:筋力強化》


「コックって料理職じゃないの!? 」


 違った。


 《コック》は、“食材の力を最大限引き出す職業”だったのだ。

 その日から、ロイドの無人島生活が始まる。

 火竜のステーキ。巨大カニ鍋。スライムゼリー。

 気づけば彼は、魔物を狩るのではなく“食材探し”を楽しむようになっていた。


「……これ、案外バカンスでは? 」




 数か月後。

 魔境だった無人島は、完全に変貌していた。

 木造コテージ。天然温泉。巨大露天キッチン。そして大量の保存食。

 ロイドは完全に南国ライフを満喫していた。

 そこへ新たな遭難者が現れる。

 獣人少女ミーナ。

 冒険者パーティーが壊滅し、島へ流れ着いたらしい。


「た、助けて……」


 瀕死だった彼女へ、ロイドは料理を振る舞う。

 特製ドラゴンスープ。

 するとミーナの傷が一瞬で回復した。


「え!? 回復魔法より効いてる!? 」


 《魔食》には回復効果まであったのだ。

 帰国したミーナによってその噂は徐々に広がっていく。

 遭難した冒険者。腕利き商人。さらには――。


「ククク、人間よ。我を食うつもりか? 」


 島の主である古代竜ヴァルグレイアまで現れた。

 だがロイドは真顔だった。


「いや、どっちかというと一緒に飯食う? 」


「……は? 」


 結果。

 古代竜すら料理に胃袋を掴まれた。


「こ、この肉料理……神か? 」


 気づけば無人島は、世界中の猛者が集まる“伝説のグルメ島”になっていた。




 ある日。

 かつてロイドを見捨てた勇者パーティーが島へ辿り着く。

 彼らはボロボロだった。


「ロイド……生きていたのか」


「助けてくれ……」


 魔王軍との戦いに敗れ、逃げ延びてきたらしい。

 ロイドは少し考えた後、普通に料理を出した。

 超高級・海竜フルコース。

 勇者たちは涙を流しながら食べる。


「うますぎる……」


「今まで食った飯と次元が違う……!」


 そして料理を食べた瞬間、全員の能力値が爆発的に上昇した。


 《魔食効果:全能力強化》


 勇者が震える。


「ロイド……お前、最強じゃないか」


 ロイドは首を傾げた。


「え? コックだけど?」


 後に、魔王すら「飯食わせてくれ」と島へ訪れるようになり、無人島は世界一平和な危険地帯として有名になる。

 そしてロイドは今日も、南国の浜辺で新作料理を作っていた。


「さて、今日は巨大タコのアヒージョでも作るか」


 戦わない。争わない。ただ美味い飯を作る。

 それだけで世界最強になってしまった男の、自由すぎる異世界バカンスは今日も続いていく。


500pv or 50pt以上いただけた評価の高いものを連載化させます!

高評価よろしくお願いします!

5月11日18時より 『【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!』が連載します!

ぜひご覧ください!!

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