第2話 家畜の性
24年間、北海道の大地でトラクターを転がし、牛と共に生きてきた男・海道緑。
そんな彼が次に転生したのは……まさかの「牛」でした。
しかも、ステータスには不穏な**「かしこさ-2」**の文字。
迫りくるプレイヤー、抗えない食欲、そして響き渡る謎のシステム音。
生存戦略(草を食べる)を余儀なくされた元酪農家の、シュールな異世界生、存劇がいま始まります!
緑は憤慨した。
俺は24年間、北海道の大地で必死に生きてきたんだ。計算だってできるし、トラクターの運転だって……。
((…とりあえず、ゲームとは無縁なのに、この環境に慣れるしか無いな…))
しかし、思考を巡らせようとすると、
脳が霧に包まれたようにぼんやりする。
これが「かしこさ-2」の呪いか。
さらに追い打ちをかけるように、視界の隅で
**「ピコン!」**と無機質な音が響いた。
『周辺に「初心者プレイヤー」を検知しました。
リスポーン地点から300メートル。逃走、またはその辺の草を食べて下さい。闘いの準備をしてください。』
「(プレイヤー……? まさか、俺は狩られる側なのか!?)」
緑の耳に、遠くから快活な話し声が届く。
「おい、あそこに牛がいるぞ! ラッキー
序盤の肉集めにちょうどいい!」
「レベル1の『食用』だし
一発で仕留められるだろ。今夜はステーキだな!」
ガサガサと草を分けて現れたのは、同じビギナーだった。安っぽい布の服を着て、錆びた剣を振り回す二人組の若者。
富良野でクマに襲われたとき、自分は仔牛を守る側だった。だが今、自分は「守られない食料」として、素人に狙われている。
緑の生存本能が
かつての酪農家の記憶を呼び起こす。
牛は、ただ食われるだけの存在じゃない。
怒った牛の突進が、どれほどの破壊力を持つか見せてやる!
「(……舐めるなよ。こっちとら、大自然が産んだ海道 緑だッ!)」
緑は蹄で土を激しく蹴り上げた。
スキル「叫ぶ」を発動させる。
「モォォォォォォォーーーーッッ!!!」
それは単なる鳴き声ではなかった。
死の淵から這い上がってきた男の
魂の咆哮だった。
「(クソッ、狙われてる……!)
逃げなきゃならない。だが、足が動かない。
それどころか――」
緑の意識とは裏腹に、首が勝手に地面へと垂れ下がった。
視界に映るのは、瑞々しく輝く未知の薬草。
「(……なんだ、この香りは。美味そうだ……)」
ガリッ、ムシャ、ムシャ……。
草を食べている時の緑の心の声(「やめろ俺の体!今はそれどころじゃない!でも…うまい!」
絶体絶命の瞬間、緑はあろうことか、目の前の草を悠然と食み始めた。「かしこさ-2」の影響か、あるいは牛としての強烈な食欲(本能)が、死の恐怖を上回ったのだ。
「おい見ろよ、こいつビビりすぎて食い始めたぞ!」
「ハハッ、楽勝じゃん! いただき――」
こうして、ゲーム世界に転生しまった海道 緑(牛)
の運命は?次回に続く。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
絶体絶命のピンチに、あろうことか「ムシャムシャ」と草を食べ始めてしまった緑。
「かしこさ-2」の呪いは、想像以上に彼の理性を侵食しているようです。果たして、このまま「今夜のステーキ」になってしまうのか……!?
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次回、「牛の突進 vs 初心者プレイヤー」。
緑の魂の咆哮が、初期フィールドに響き渡ります。お楽しみに!




