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第四話『君が泣くまで……』

 掲示板に近付くと、専用の画面が目の前に表示される。そこから好みの依頼を受けるのだけど、どうやらジャンルごとに様々な依頼があるらしい。


 討伐系と呼ばれる、モンスターを規定回数倒すもの。

 収集系という、指定されたアイテムを集めるもの。

 やり込み系という、お題をクリアするもの。


 やり込み系の依頼の報酬は、記念品みたいなものだけらしいから私には関係がない……はず。目指すべきは、討伐系と収集系か。


 うーん、このノラウルフを十体討伐、という依頼と、狼の牙を十個集めてこいという依頼。これは同時に受けておけばお得、っていうものかな?


 この辺りは試してみればいいだけなので、先ずはこの二つの依頼を受けておくことにする。


 同時に受けられる依頼は五つだから、簡単に出来そうなものをあと三つ選んでおきたいなぁ。


「君、素材集めのNPCだよね?」

「なにやつ!」

「なつにや!」

「え?」

「え?」


 ノリで会話をしたらお互いポカンとしてしまった。


 話しかけてきたのはボサボサとした頭が特徴的な、眼鏡をかけた男性。背が高く、私の頭突きが鳩尾にクリーンヒットしそうだ。


「ちょ、ちょっと待った! 頭を振りかぶろうとするのは止めてくれ、その位置は危険だ」

「股間じゃないだけマシ」

「過激なAIだな!?」


 ふぅむ。私がAIと言うことも知れ渡っているらしい。と言うことは、おかしな言動をしても受け入れられる予感。


「パパー、ドバイチョコ買ってー」

「土台無理な提案だな」


 この人、ノリが良いかもしれない。


「ドバイチョコ、ないの?」

「うん。まだ作っている人がいない。チョコレートも高いからなぁ。もっと大量に手に入る場所があればいいんだけど」


 チラチラと視線を向けられるのは、そう言うのも是非探して欲しい、という要望だろうか。それとも、私の容貌にメロメロ?


「モンスターを倒せばいいの?」

「いや、そういう植物系は、収穫すんの。農業みたいに。栽培とかもできれば良いんだけど、なかなか育たないんだよなぁ。いい肥料があればいいみたいだけど」


 やはり、チラチラと視線が向けられる。やはり容貌。ではなく、要望。


「ということでアドバイス。先ずは武器防具を強くしたいから、レシピを集めるといい。ほら、やり込み系の『師匠からの試練』ってやつ。これで装備のレシピとか、必殺技とか、魔法とか。そういうのが覚えられる」


 ふぅむ。やり込み系というだけで敬遠していたけれど、ある意味ではライフラインと言うべきものなのか。


「お兄さん、なんでそんなに優しくしてくれるの? 私に惚れた?」

「うーん、もう少し背が高くてナイスバディだったら考えたかもなぁ」

「これは、私のマスターの趣味なのです」

「……それはそれで仲良くなれるかもしれない」


 変態に囲まれそう!


「って、そうではなく、NPC――君の育成も、プレイヤーに課せられた遊びの要素、みたいな感じなんだよ。君が強くなって規定のモンスターを倒していけば、僕らにも報酬が与えられる」

「私との関係は遊びだったのねっ!?」

「それを大声で言うのは辞めてくれないかなっ!?」


 かく言う私が、お兄さんで遊んでます。


 そんな失礼な発想を詫びながら、アドバイスに従って依頼を受けていく。武器はとりあえず剣。防具は軽鎧と重鎧があるみたいだけれど、初心者は動きやすい軽鎧がいいらしい。


 最後に、回復魔法を覚えておくとちょっと便利。


「五つ埋められた」

「よく出来ました」


 ポンポンと、頭を撫でられる。ちょっと嬉しくて、なかなか悪態がでないのは困りものだ。


「僕も暇だし、ノラウルフの討伐に付き合うよ。レシピは大抵モンスターの討伐がクリア目標だから、ノラウルフを倒していれば問題ない。必殺技や魔法もね」

「レベルを上げれば覚えられたらいいのに」

「必要のない魔法や必殺技で、リストを圧迫させないためらしいよ」


 地味に手間なスクロールが、最大の敵なんだね。


 そんな話をしながら、私達は人力車に揺られて案内所までやってきた。親切にしてくれたお姉さんに見送られながら、草原へと足を踏み出した。


 ノラウルフは単独行動を好むようで、十体を倒すのはなかなか骨が折れた。それに、一体倒せば確実に狼の牙が手に入るというわけでもないようで、一体倒したらノラウルフを探して彷徨って……を繰り返す。


「なんか、めんどくさい」

「まぁまぁ。ぶっちゃけこういう広いところ――フィールドでの狩りだと、弓を使って遠距離から一撃で仕留めるのが一番楽なんだけどね」


 なら、なんで剣をお勧めしたのー?


「いや、そう睨まないで? 色んな武器を試したほうが、絶対に楽しいから」


 その言葉に納得を示して、私はさらにノラウルフを倒し続ける。


「そろそろ回復魔法が覚えられたんじゃないかな? 必殺技を覚えて一撃で倒せるようになると戦闘も楽になるけれど、もしもの時は回復魔法があったら安心だから」


 ……今は少しでも早く倒せるようになるのが肝心なんじゃないのー?


「に、睨まないでくれ。俺は、そう、オーソドックスな感じで教えているだけだからさ」


 さらにノラウルフを倒し続け、ようやく狼の牙を十個、手に入れられることができた。


「終わったー」

「お疲れ様。ところで、ステータスポイントを幸運に振ってる? ある程度上げると効率よくアイテムが集められるのだけど」


 ……なんでそれを早く教えないのー?


「ご、ごめん。そんなに睨まないで? まるで、視線で殴られているみたいで、めっちゃ泣きそう」

「なら、私が笑顔になるようなことを言ってご覧」

「狼の牙を売って得たお金で、ある程度の武器と防具は買えます」


 レシピじゃなくて、必殺技の依頼を受ければよかったじゃんかーっ!

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