第十一話『夢の話』
夢を見るのは人間だけ。
そんな話を、どこかで聞いたような気がした。
私は草原の中を駆け回っていて、モンスターの姿を見かければ、ピタリと止まって矢を継がえる。
緊張感が漂っているのは、おそらく自分の周りだけなのだろう。標的となっているモンスターは、きっとその状況を理解していない。呑気に、自身の生存に一生懸命となって草を食んでいる。
弦が振動する音を耳元に感じる。
放たれた矢は真っすぐに進み、標的となったモンスターに命中する。断末魔は聞こえない。黒い靄のように消えていくモンスターを見ながら、私は息を吐いた。
夢を見ていると、あぁ、これは夢だなって思うタイミングがやってくる。そうしたタイミングで、その夢の中の自分の操作権が、私自身に引き継がれるのだ。
夢の中の世界で、自分自身の意志で動けるようになる。しかし、それと同時に事態は思いもよらぬ方向へと進んでいく場合もある。
夢の中ではあんなに自由に動けていたのに、自分の意思を持った途端、否定をしたくなるのだ。
この展開は嫌だ。もっとこうしていた。夢なのだからやり直そう。もう一度、あそこから。
その思ったが最後。パチリと目が覚めてしまい。胸を締めるのは後悔だけ。
あの時こうしていれよかった。あのまま進んでいたらどうなっていただろう。二度寝をすればまた、続きから始まるのだろうか。
そうして瞼を閉じてみても、ただ闇雲に時間が過ぎて、気が付けば……。
「こんにちわー。アンティちゃん、居ますかー」
私の瞼は完全に持ち上がり、今まで何を考えていたんだっけ、とポカンと口を空けた。
そして周囲に視線を這わせると、そこがリビングであり、私はソファの上にいることを把握する。
「テレビを見ていて、そのまま寝ちゃったんだ」
テレビ画面には、東京の美味しいレストランを紹介しているらしいコーナーが映し出されている。
肉汁溢れるハンバーグが美味しそうで、上からフォークで押さえて、滲み出るそれをタレントの女性が必死に表現をしている。
「お腹、空いた」
「あれー、留守かな?」
「お腹空いたなー!」
「え、なに!?」
思いの丈を叫んだら、玄関の向こうにいる誰かさんに混乱を与えてしまったらしい。
目を擦りながらソファを降り、玄関へ向かう。そうしてドアを開けてみれば、そこには袴姿の似合う女性が、にこやかに立っていた。
「こんにちは、デリバリーでーす。なんちゃって」
「ハンバーグ?」
「え!? あ、ごめん、ピザしか持ってない」
私と弓姫のファーストコンタクトは、このようなものだった。




