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プロローグ

 私は、俗に言うAIです。俗にも何もないだろうけれど、私個人の知識量から判断すると、完璧に、と付けるわけにはいかないと思って。


 開発された目的は、オンラインゲームに登場する強力なモンスターになれるように。


 フルダイブと呼ばれる意識でアバターを動かす、ゲームの中に入ったようなオンラインゲームが人気を博す中。新進気鋭のニューカマー、『サキガケゲームズ』という会社で産声を上げた。


 いや、比喩だよ? 別にコンピューターの中でオギャーと鳴くわけじゃない。将来的にはガオー、と鳴くかもしれないけれど。


 そんな私に、開発者でもある坂田が声をかける。


「ねぇ、アンティ。僕たちが作ったゲーム、イングワールドオンラインも一周年を迎えた」


 サキガケゲームズはゲームの運営開発を手掛けていて、社長を始め、各部門のトップはすべて家族で構成されているらしい。私はその中の開発部門のトップをしている、弟さんしか知らないのだけど。


「因みに僕は兄の方ね」


 ……全然気が付かなかった。そうだ、開発部門のトップと運営部門のトップは双子で、本当にそっくりだったんだ。


 こうやってどこか抜けているのが、自分のことを俗に、なんて表現する所以だ。何故だか分からないけれど、私は機械のように完璧な仕事をしようとしない。


 これが人の思考なのかな? なんて思ってしまうほど。


「ははっ、戸惑っているね。画面の揺らぎを見れば分かる。ねぇ、喋れるんだろう? 弟から聞いているよ」

「はい。マスターのブラザー。私に何かご用ですか?」

「ちょっと頼みたいことがあってね。だからこうして、弟に頼んで君と面会をしている」


 コンピューターに搭載されたカメラを使って、目の前の顔をじっくりと眺める。本当にお兄さんなのかな? 見た目からは全く分からない。


「うん。思考様式は人間に近そうだ。そういうデータをしている。何でもこうなったか、は分からないけれど、うーん、あの日の落雷が原因か?」

「私は壊れているのですか? 処分?」

「お、声色が揺れているね。不安がっているのかな? ふふん、心配は要らないよ。君には、ゲームをしてもらいたいんだ」


 ゲーム。それは遊戯? 会社のパソコンにも入っている、ミニゲームのようなものをするのでしょうか。


「うちのゲームにも、さ。長く続けるうえでの心配事があってね。その問題を解消するために思い切って、君に働いてもらおうと思う」

「働く……。お仕事です? ついに、モンスターとしての出番ですね」

「いや、それは白紙にした。君はちょっと、モンスターにするには、こうは、迫力が……」

「がおー!」

「声を可愛くなりすぎているなぁ。いや、より人間の声らしくなっている。本当に不思議だ」


 別に、声は幾らでも変えられるのでは? そう問い掛けると、難しい顔をする。


「君、機能の大半がブラックボックス化していてね。下手に弄れないんだ。こんな面白いAIを壊すのは勿体ないし、様子を見たいし」

「はぁ」

「それを加味してのお仕事さ。幸い器を用意することは出来そうだから、先ずは僕たち自慢のゲームを楽しんで欲しい。あの世界で、また話の続きをしよう」


 そう言って、彼は私の体……体? にデータをインストールし始めた。


 働く。仕事。これからどんなことが始まるのか、私にはまだ分からない。けれどその言葉を聞いて、こんな自分でも必要とされるんだって、なんだか嬉しくなった。


 ゲームを起動し、私は新たな世界を見る。こんにちは、広い世界。カメラでは見ることのできない世界。まず感じたことは、……風が気持ちいいなぁ

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