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仮面ノ騎士  作者: marvin
迷子ノ旅人Ⅳ
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第10話

 一夜が明けると港湾の行き来に見通しが出た。

 会場衛士の護衛は付くが入出港は順次再開だ。

 互いの連れと合流した四人は、一夜マリエルの宿にいた。

 皆の身仕舞や経緯の語りで寝入ったのは明け方近くだ。

 機能復旧を要するダリルも眠るに近い状態にいた。

 翌、皆は互いの予定を語る。

 マリエルとダリルは連れとの合流を待って北のシュタインバルトへ。

 ザビーネとラグナスは南のドワールフォートへ。

 互いに目的あっての旅だ。詳しい事情は語らないようにしよう。

 ラグナスはそう提案した。

 良くも悪くも巻き込んでしまう。それが彼の懸念にあった。

「縁があるなら、また会うだろう」

 微妙な含みを怪訝に感じて、マリエルはラグナスとザビーネを見比べた。

「あー、ちょっとさ、部屋が空いたかどうか訊いて来る」

 視線に気付いてザビーネが椅子を空ける。

 宿屋に言って借りたものだ。空きができたら世話になるとの約束だった。

「長居しちゃ悪いし、ええと、それに二部屋要るしね」

 扉に半身を覗かせ言うと姿を消した。

 マリエルはむしろ呆気に取られていた。ザビーネの態度が印象に合わない。

「ザビーネとは一緒なんですよね」

 無頓着なラグナスに訊ねる。

「勿論彼女が目的を果たせるまでは一緒にいるつもりだ」

「はあ?」

 だん、とマリエルが卓を叩いた。

 今までにない剣幕だった。

 ラグナスどころかダリルさえ驚いて姿勢を正した。

「何を考えているんですか、ラグナス」

「何をって」

 訳が分からず目が泳ぐ。

「あんなに可愛くて強い人、他に絶対にいませんからね」

「それはそうだが」

 助けを求めるようにダリルに目を遣る。ダリルはラグナスから目を逸らした。

「ラグナス」

 マリエルが詰める。

 ほらね、本当のマリエルは強くて怖いんだ。

 天を仰いだダリル・カデットは人の溜息を真似る。

「責任があるんだ、ちゃんと考えないと、僕は自分が止められない」

 ラグナスは思わず身を逸らし、詰まりながら口にした。

「何だ、それ」

 扉を撥ね開けザビーネが素っ頓狂な声を上げた。

 目も口も三角にしてラグナスに詰め寄る。

「こっちはあんたの身体とか、あたしの昔の事だとか、色々散々悩んでさあ」

 大きく息を吸い込んで、結局震えて吐息に呟く。

「真面目か、この馬鹿」

 この状況を理解はしたが、ラグナスの語意に小粋な返しはない。

 人であった生前に、それを学ばなかったのは失敗だった。

「大真面目だ」

 馬鹿正直に返されて、ザビーネは鼻先を指で弾かれたような顔をした。

 見る間に耳の先まで茹で上がる。

 マリエルはひとり鼻息を荒げ、二人を見遣って満足した。

 人の情動関数(ノマージュ)は理解が容易い。

 だが、描く式には無理のある記述だ。

 マリエルはダリルに目を遣った。

 二人を眺める彼の眼は、大方跳ねた心拍数でも数えているのだろう。

 その現象を類推はできても、理解するには程遠い。

 まだ、遠い。

「行きましょうダリル、オベロンの便を確認しなきゃ」

 マリエルはダリルの手を引いて二人の前を擦り抜けた。

 きっと、あなたにはまだ早い。

 たぶん、私もまだ遠い。

 いまある思索の混沌を、そうあるものだと理解する事が最初だ。

 ダリルにそのひとつひとつを教えよう。

 二人で一緒に紐解いて行こう。

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