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仮面ノ騎士  作者: marvin
迷子ノ旅人Ⅳ
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第5話

 橋を飛び、柵を跳ね越え、樹々の間を臆することなく馬が駆ける。

 鈍重そうな見掛けに反してサイクは異様に身が軽い。

 ダリル・カデットが安堵したのは、馬上に馴染めた一点だ。

 鞍が二人掛けの特別誂えだったのも都合が良かった。

 サイクは勿論、手綱を取ったラグナスにしがみ付く際の加減ができた。

 縊り殺さずに澄んだのは幸いだ。

 追跡者は四機が速度と地形に対応できなかった。

 だがまだ三機が追って来る。

 ラグナスの指摘した通り、ダリルが鞍に跨るや彼らは知らぬ素振りを止めた。

 心音さえも偽装だった。

 襲って来た裏路地の追跡者もそうだ。循環液まで血に似せていた。

 人に擬装する魔導機(オートマタ)だ。

 あるいは罪深きもの(ブラスフェミア)の従機か。

 群体制御の高知能。軟体動物の模倣であれば、モルスクスが指揮機だ。

 ならば一層人への擬装は判別が難しい。ことダリルには困難だ。

 人の識別点を重点的に阻害するだろう。

 多少の危害に目を瞑る意図的な索敵が必要になる。

 そして、その行為はきっとマリエルに嫌われる。社会的に妥当ではないからだ。

 ラグナスは違う。

 気配と称した感覚で追跡者を見通した。

 それが社会的な事象や動作の傾向であれば学ぶことも可能だろう。

 星辰界(アストラル)の認知であればお手上げだ。

 ダリルに人と同じ魂はない。それを知覚する機能も低い。

 船便での到着を待つ、あの連れに頼らざるを得ない所以だ。

「このまま追って来るようであれば衝突は避けられないが」

 ラグナスが背中に声を掛ける。

「君はどうしたい」

 彼の意図は理解した。

 森に馬を走らせたのは戦闘行為を衆目に晒さない為だ。

 あるいは被害の拡大を防ぐ意図もあるのだろう。

 マリエルの指針にも沿っている。

 何より此処なら彼女にも危害が及ばない。

「対応します」

「なら任せよう」

 即断だった。

 何だろう、言い切る言葉が心地よい。

 サイクが歩みを止めるのを待たず、ダリルは鞍から飛び降りた。

 駆けて来る一機はもう間近だ。

 相手は衝突を躱そうと跳ぶも間に合わない。

 ダリルは同じ方向に身を移し、相手の胸に手を突き入れた。

 勢い余って相手の演算殻が割れ、機能の一切が停止した。

 樹の裏から触腕状に変形した腕が伸びる。

 ダリルの間近で嚢のように大きく広がり、半身に絡む。

 ダリルは掴んで大きく引いた。

 相手の固定が間に合わず、身体ごと跳び込んで来る。

 腕を振って樹に叩き付け、逆手に払って樹に巻いて引く。

 貼り付く触腕が撓むに任せ、そのまま胸部を殴り潰した。

 ダリルの逆の手に触腕が絡む。

 最後の一機が間近に居た。

 動かぬ一機の絡まる腕で、両手が引かれて動かない。

 引くもダリルの足場が滑った。

 相手は身体に生え伸びた肢を樹に巻き固定している。

 ダリルの腕先が剥き出しになり、硬化皮膜の金属肢に変じる。

 ダリルは絡む触腕を断ち、跳んだ。

 相手の身体に金属繊維の流れを読み取り、間隙に腕を差し込んだ。

 導管が途切れて動きを止める。

 ダリルは胸部に演算殻を探り、掴み出した。

 マリエルの選んだ服を破かないよう、絡んだ触腕を引き剥がす。

 幸い彼らの循環液に色はないが、早く洗わねば匂いが残る。

魔導機(オートマタ)か」

 後ろにラグナスが立っていた。

 言ったその名は専門的だ。

 マリエルと同じ魔術師でなければ知る者は少ない。

 あるいは、それに関わる者だ。

「あなたもボクを追って来たの?」

 ラグナスは肩を竦めて見せた。

 見つめたまま返答を待つ少年に気付いて説明を加える。

 血塗れの手の少年が街外れにいた。それをよくある事とは思わない。

 人でもない追手がいるなら、尚更だ。

「そうなの?」

「僕はそうだ」

 また道行きが逸れると連れに叱られるが、こればかりは仕方がない。

 ラグナスは言って、そう笑う。

 これはマリエルの言うところ、お人好しと云う人の属性だ。

「君はまるで人のようだが」

 つまりは人でないのだと、ラグナスはそう気が付いている。

 告げるな。それは彼女の命令(オーダー)だ。

「答えられない、マリエルの許可が必要だ」

「マリエルって」

「マリエル・ルミナフは一緒に旅をしている、保護者、と自分では言ってる」

 ダリルの言葉にラグナスは呻いた。

「料理評者じゃなかったのか」

 頭を掻きつつダリルに問う。

「その人は今誰かと一緒か」

「船が遅れて、今は一人だ」

 ダリルも懸念を理解した。

 だが追跡者はダリルの確保を優先する。

 その筈だ。

 マリエル・ルミナフは保護対象であり、危害を加える事はない。

 ただし拉致と隔離は考慮すべきだ。

「ダリル」

 どうしてあのとき離れてしまった。

 不理解への反発。原始的な人の情動。

 自分は何故そんなものに優先順位を任せたのか。

 情動関数(ノマージュ)の抑制が拙い。

「ダリル」

 ラグナスが肩を掴んで意識を呼び戻した。

「迷っているなら君に判断基準を教えよう」

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